2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K07374
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
中矢 正 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 講師 (50374559)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | FUS / ALS / 細胞外分泌 / RNA結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
核内RNA結合分子であるFUSは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因因子であることが知られている。FUSの機能異常が疾患発症に深く関わると考えられており、これまでの様々な解析から、FUSがRNA結合能を介して細胞内遺伝子発現に寄与することや、細胞内凝集体生成機構が明らかにされてきた。近年、FUSを含めたいくつかのALS原因因子が細胞間を伝播することによって罹患領域を拡大する可能性が示唆されてきた。本研究では、FUSによる疾患伝播機構を明らかにすることを目的としている。 2022年度はFUSの細胞外分泌に関わる分子内領域を同定することを目的とした。FUSには5つの分子内領域が存在していることから、マウスES細胞を由来とする神経細胞に野生型FUS及び各領域を欠損した変異型FUSを導入し、培養培地に含まれる分泌型FUSを検出することでその同定を試みた。その結果、いくつかの変異体では分泌量が変化することを見出した。本研究開始前の想定では、特定の部位が分泌に関わると考えていたが、実際に実験を行ったところ、変異型FUSによって分泌量が増減しており各領域が協調して分泌に関わる可能性が考えられた。このことから、研究申請時の想定よりもより複雑な分子機構によってFUSの分泌が制御されていることが考えられた。 また、FUSの細胞外への分泌経路を明らかにすることを目的として、FUSの核内移行阻害剤を見出す実験を行った。これまでの報告においてM9Mと呼ばれるペプチドが阻害剤であると見いだされていたことから、M9Mペプチドを発現するプラスミドを作成し、神経細胞に発現させた後、FUSの細胞内局在を観測した。ところが、M9Mを発現させた細胞におけるFUSの細胞内局在はM9M非発現細胞と比較して変化しない現象が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FUSの細胞外分泌が単一の分子内領域に依存することを想定して、責任領域を同定する予定であったが、想定の範囲ではあるものの、様々な分子内領域がFUSの分泌に寄与していることが考えられた。申請した研究計画では、責任領域に結合する因子の同定を目指していたが、より複雑な責任領域の同定を如何に行うか実験計画を立て直す必要があると考えている。また、細胞外分泌に関わる分子経路を同定するためにはFUSの核内移行を阻害する実験系が必要であると考えているが、報告通りにM9Mを用いた場合にはFUSの核内移行が阻害できなかった。但し、M9Mを用いた報告は複数あることから、再現性がある系と考えられるので、同実験に適した条件の検討により解決できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
FUSの細胞外分泌に関わる責任領域に同定については、分泌の増減が顕著な領域欠損変異体と野生型FUSに結合する因子を比較する系により責任因子の同定を行う計画としている。分泌経路分子機構の同定では、M9Mを用いたFUSの核内移行阻害が必要であることから、M9Mコンストラクトの再構築及び、既報告における条件を用いた実験条件の最適化を行う。また、既存の核内移行阻害剤を用いた実験も行う計画としている。
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Causes of Carryover |
当初想定していた、本年度に使用予定としていた細胞培養用のテストチューブについて、次年度に使用予定としたため。
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