2023 Fiscal Year Research-status Report
Functional recovery of injured CNS by artificial synapse connect
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22K07381
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
笹倉 寛之 愛知医科大学, 医学部, 特別研究助教 (50751616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池野 正史 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80298546)
武内 恒成 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90206946)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / シナプス / 人為的シナプス架橋分子 / マウスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究事業は、人為的に設計されたシナプス架橋分子CPTXにより失われた中枢神経機能回復を目的としている。具体的には亜急性期・慢性期の脊髄損傷マウスモデルに、人工シナプスオルガナイザータンパク質CPTXを導入し、運動学的・生理学的な機能回復を目指している。CPTXは慶應義塾大学医学部の柚﨑・鈴木らによって開発された強力なシナプス形成能を持つ人工タンパク質である(Suzuki, Sasakura., al. Science, 2020, Aug 28)。本事業責任者らは、 CPTX投与により急性期の脊髄損傷を回復することを見出した。これはシナプス構造を直接的に制御することにより損傷によって失われた脊髄機能を回復させる画期的な成果であった。次に従来、回復が困難とされている亜急性期・慢性期脊髄損傷治癒の研究に着手した。脊髄損傷から長時間経過した損傷部位は癒着が進行しているため、CPTXを脊髄へ注入するのが困難であった。この技術的問題を解決する手技・手法を昨年度確立した。この結果を踏まえ、亜急性期・慢性期に相当する脊髄損傷後4, 6週間後のマウス脊髄にCPTXを注入した。CPTXは亜急性期・慢性期の脊髄損傷の機能回復を導いた。CPTX注入数日で後肢の動きが活発になり、注入後2週間で効果が最大となりスムーズにステップを踏むマウスも現れた。これらの結果は、CPTXが脊髄損傷から長時間経過し不活性した神経経路を再活性化したことを示唆する。さらにCPTXにより脊髄損傷亜急性期・慢性期から回復した個体群の行動・感覚を解析する実験系の導入・開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究事業2年目の状況として順調に進行していると考えられる。理由として、マウスの亜急性期・慢性期脊髄損傷挫滅モデルにCPTXを投与することにより、 本来は inactiveな下肢をactiveな状態に回復することに成功したことがあげられる。慢性期脊髄損傷からの回復は従来困難とされており、今回の結果は大変インパクトある結果だと思われる。また、どのような作動原理で機能回復を導いたかを明らかにする目的で、行動・感覚を定性・定量的に解析する実験システムの導入・開発を進められたことも大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの亜急性期・慢性期脊髄損傷挫滅モデルにCPTXを投与することにより、 本来は inactiveな下肢をactiveな状態に回復することに成功した。今後は回復した運動をいかに持続させ、永続的な回復に導くかが課題となる。その実現に向け、CPTXとリハビリテーションあるいは他の脊髄損傷を回復させる因子との併用をおこない、回復を持続させる条件を検討する。また本年度進展があった歩行定量システム等を用いて回復の定量化を進める。さらに研究分担者の池野と協力し、足場細胞として優れているマウス歯髄細胞(SHED細胞)にhTERT、HSVtk遺伝さらにCPTX遺伝子を導入し、CPTXを永続的に発現する不死化した細胞の樹立を試み、脊髄損傷部への移植を行いたい。
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Causes of Carryover |
今年度はマウスの in vivo実験を中心に研究事業を行った。主にマウスの飼育・維持、マウス実験遂行の費用、学会参加費に予算を計上した。そのため予算の支出を比較的低く抑えることができた。来年度は、マウスの行動・生理解析、細胞生物学実験に多くの費用の投入が予想されるため予算の繰越を行った。
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