2022 Fiscal Year Research-status Report
過敏性腸症候群の腸管透過性の亢進を制御する腸内細菌および宿主の病態解析
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22K07417
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 潤 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50631561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 雅登 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (10913113)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 過敏性腸症候群 / 腸内細菌 / 腸管上皮透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
過敏性腸症候群(IBS)は腹痛を伴う下痢や便秘が慢性的に持続する疾患で、そのメカニズムは不明である。腸管の内視鏡や画像検査では器質的異常を認めないものの、腸管粘膜透過性の亢進および粘膜内の微小な炎症があり病態に関与している可能性が指摘されている。さらに腸内細菌の異常が報告されている。本研究の目的は、IBSの腸内細菌叢と腸管上皮の透過性亢進の関連を明らかにし、IBS病態の解明を目指す。独自の腸内細菌培養モデルを中心としたin vitro実験系を軸に、動物実験を併用し実験を行う。 令和4年度は、IBS患者の糞便サンプルからIBS腸内細菌培養モデルの構築を行い、構築した腸内細菌培養モデルを腸管上皮培養モデル上で共培養し、好気条件および嫌気条件での上皮の障害性を解析した。好気環境において腸管上皮細胞であるcaco-2細胞を用いたトランスウェル培養装置へ腸内細菌培養上清を投与すると、IBS患者の培養上清では健常者の培養上清と比べ腸管上皮の透過性が亢進していた。このことから、IBS患者の培養上清には腸管上皮を障害し透過性を亢進させる代謝物が含まれている可能性が示唆された。さらに、好気条件で腸内細菌培養モデルの上清を取り除いた細菌のみを腸管上皮細胞モデルに投与すると、上皮の透過性が健常者と比べ亢進する一方で、嫌気環境では透過性の亢進は見られなかった。 これらのことから、小腸細菌増殖症が存在するIBS患者の小腸の微好気環境で活動が亢進する細菌がIBSに関わっている可能性があるのではないかと考え、今後in vitroでIBSの腸内細菌による腸管透過性亢進の分子学的機序の解析およびin vivoでの解析も進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸内細菌の培養モデルおよび腸管上皮の培養モデルなどの、嫌気および好気条件はじめ、in vitroの系の条件検討などを詳細に検討でき、分子機序を解析を可能とするモデル立ち上げが順調であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌培養モデルと腸管上皮培養モデルをあわせたin vitroでの共培養モデルで、IBSと健常者の腸内細菌の比較解析を進め、IBSの腸内細菌が腸管上皮に与える因子を、培養上清・菌体そのものの観点から分子学的な解析を進める。さらにIBSモデルマウスを用いたin vivoでの解析も進めていく。
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Causes of Carryover |
予定していた外注や解析パソコンの購入を次年度以降にまわしたため。
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