2022 Fiscal Year Research-status Report
終末期の病態解明と新規治療法開発ー骨髄‐脳‐筋相関と運動からのアプローチー
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22K07423
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10452947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 治樹 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (30452949)
安宅 弘司 神戸薬科大学, 薬学部, 特任助教 (30563358)
加藤 郁夫 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (70509843)
網谷 東方 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (70535674)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 終末期 / 筋由来ペプチド / 視床下部 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本の平均寿命は急速に延び、高齢化率は世界1位となり、悪性新生物や糖尿病への罹患者は増加し続けている。罹癌・糖尿病に伴う悪液質、加齢によるサルコペニア・フレイルは、心身の両面において罹患者の生活の質、死期の質を著しく低下させ、終末期医療において重要な社会問題となっている。しかし、その発症、進展のメカニズムの多くが不詳であり、有効な治療法・予防法の開発は遅れ、学術的に極めて重要な研究課題になっている。本研究課題は、罹癌・糖尿病に伴う悪液質、加齢によるサルコペニア・フレイル及び心身の関連症状の発症と進展のメカニズムを、筋由来ペプチド、視床下部の神経ペプチド、骨髄由来細胞との関連に焦点をあてて解明するとともに、新規治療法・予防法を開発することを目的としている。令和4年度は、マウスを用い、筋由来ペプチドであるマスクリンのうつ様・不安様行動に与える影響を検討するため、合成したマウスマスクリンを末梢及び中枢に投与し、強制水泳試験、高架式十字迷路試験を行った。その結果、マスクリンの投与により強制水泳試験において無動時間が短縮するとともに、高架式十字迷路試験においてオープンアームでの滞在時間が減少した。また、マスクリンの投与後に、視床下部を摘出し、c-Fosの発現を免疫染色法、agouti-related protein (AgRP)、neuropeptide Y (NPY)、cocaine- and amphetamine-regulated transcript (CART)、corticotropin-releasing hormone (CRH)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)などの神経ペプチドのmRNAの発現をreal-time PCR法にて解析した。その結果、室傍核においてc-Fosの発現の増加、弓状核において減少が認められ、AgRP、NPY、CART、CRH、BDNFの発現に差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋由来ペプチドが中枢に作用し、気分や不安に影響を与えている可能性を示唆する知見が得られ、罹癌・糖尿病に伴う悪液質、加齢によるサルコペニア・フレイルの治療・予防において、筋肉が新規治療・予防のターゲットになる可能性が考えられ、本知見は、本研究課題において次年度以降に予定している研究の実施に有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度においても、令和4年度に引き続き筋由来ペプチドであるマスクリンの中枢に与える影響に関して、視床下部の神経ペプチドに焦点を当てて解析を行う。マスクリンの投与によって変化する神経ペプチドを同定するとともに、悪液質、サルコペニア・フレイルの病態モデルマウスを用いて、マスクリンのうつ様・不安様行動への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
研究分担者の加藤郁夫が担当する研究において、ペプチドの合成経費が、既存の合成ペプチドで2022年度の実験が実施されたため、不要となったこと、ペプチドの血中濃度測定の実験が、十分な検体が収集できなかったため、次年度予定になったこと、が理由であり、2023年度においては、ペプチドの合成および血中濃度測定が実施される予定である。
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