2023 Fiscal Year Research-status Report
生薬オウギによる腎機能改善の分子メカニズムの解明と臨床応用
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22K07429
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
野上 達也 東海大学, 医学部, 准教授 (80587973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 信 東海大学, 医学部, 教授 (30222722)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 急性腎臓病 / オウギ / 老齢マウス / シスプラチン / カルノシン |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)の病的進行に対するオウギの改善効果を検討するなかで、CKDの進行に深く関わっている急性腎障害(acute kidney injury; AKI)に注目し、黄耆のAKI阻害作用を介してCKD増悪阻止させるという薬効メカニズムの可能性を考えている。 今年度までの研究成果として、オウギがどのような状況でAKI阻害作用を発揮するかについて統計学的検討ができるまで十分な実験データを得ることができた。今年度もシスプラチン(CDDP)腹腔投与による実験的AKIモデルを用いて検討した。通常の実験動物として使用される若齢マウスでは顕著なオウギ薬効は認められなかったが、生後1年を経過した老齢マウスで発症させた実験的AKIについては、オウギによる統計学的に有意な阻害作用が認められた。これは、AKIで引き起こされる炎症性浸潤細胞のCD3陽性細胞とCD68陽性細胞の単位面積あたりの細胞数で検討した。興味深いことに、老齢マウスでAKIを発症させたCDDP量では、若齢マウスにはAKIは発症しなかった。具体的には、老齢マウスでは14 mg/kg CDDP投与でAKIが発症するが、若齢マウスでAKIを発症させるためには20 mg/kg CDDP投与が必要であった。以上の結果から、加齢によりシスプラチンAKI発症の感受性が高くなった生体環境で、オウギがAKI感受性を低下させる、または正常化させる薬効メカニズムが考えられた。次に、昨年度に検討したオウギの薬効の標的分子の候補として、腎保護作用をもつカルノシン(β-アラニル-L-ヒスチジン)の血中濃度の変動をELISA法にて検討した。オウギを投与すると若齢・老齢に関わらず、血清カルノシン濃度が上昇した。AKIに対する有効性を表す標的分子である可能性を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では人でのカルノシン濃度の検討を行う計画であったが、測定精度の安定化に課題がある可能性があり、適切な条件を検討している段階である。 その一方で、並行して進行していた人でのオウギ末の有効性を検討する特定臨床研究は順調に進行しており、症例の蓄積を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
シスプラチンによる急性腎障害モデルマウスでの検討ではオウギの有効性は腎保護作用のあるカルノシンが関与している可能性を念頭に研究を進行している。 今後は、ヒトがオウギを摂取した際のカルノシン血中濃度を検討することを計画している。 また、特定臨床研究としてオウギ末を用いた慢性腎臓病患者を対象とした特定臨床研究も進行中であり、その研究の過程で得られたヒトの試料の解析などを行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
ヒトでのカルノシン測定を予定していたが、測定精度が安定せず、現時点で実施できていないため、その費用が次年度使用額となった。
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Research Products
(2 results)