2022 Fiscal Year Research-status Report
複数の疾患で量的変動を示す生体内ペプチド:その病態生理学的意義
Project/Area Number |
22K07455
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
柳田 光昭 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (80365569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 圭吾 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40465068)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生体内ペプチド / 疾患バイオマーカー / プロセシング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、生体内ペプチドを疾患の診断マーカーに応用する探索研究が増えているが、多くの場合はそれ単独での疾患診断には適さない。我々が着目している7種類の生体内ペプチドもさまざまな疾患で量的変動を示しているが、その変動メカニズムは明らかではない。生体内ペプチドはタンパク質からのプロテアーゼによる機能的な切断(プロセシング)や特異的あるいは非特異的な分解により生成するとされているが、本研究では7種類の生体内ペプチドの生成メカニズムが、(1)ペプチドの由来する元のタンパク質発現量の増加、(2)切断・分解による生成反応の亢進、のどちらによるものかを明らかにする。疾患を越えて共通に変動する生体内ペプチドの生成メカニズムを調べることは、機能未知の生体内ペプチドを生化学的に意味付け、診断マーカーペプチドとしての臨床的有用性につながると考える。 2022年度は、これまで未調査であった関節リウマチ(RA)患者の生物学的製剤による治療前後の血清で、我々の確立したLC-MRM/MS法により7種類の生体内ペプチドを一斉測定し、疾患との関連を調べた。その結果、疾患の治療前後で有意な差を示したペプチドが2種類存在した。このうちの1種類は以前の研究で検診パラメータと相関することを明らかにしている。また、7種類のペプチドが由来する5種類のタンパク質について、RA患者の血清プロテオーム解析により定量された治療前後のタンパク質相対濃度と対応するペプチド濃度との相関を調べた。その結果、上記の2種類のペプチドは相関を示さなかったが、他のペプチドで治療の段階によって相関の程度が異なっているペプチドが見出された。したがって、現段階では、生体内ペプチドは元のタンパク質の量の影響をうけつつも、疾患などの他の要因によって量的変動を示すことが明らかとなり、その傾向はペプチドの種類によって異なることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は関節リウマチ患者血清検体における生体内ペプチドの治療前後での変動解析を行う計画であり、おおむね予定通りに行った。 7種類の生体内ペプチドが由来する5種類のタンパク質については、すべて血清プロテオーム解析で治療前後の相対濃度を解析できており、まずはその段階でペプチド濃度との相関を検定した。当初の計画通り、2023年度にかけてより正確なタンパク質定量を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、各血清検体で生体内ペプチド濃度とプロテオーム解析データを比較し、量的相関を示すタンパク質群を抽出する。プロテオームデータで有意な相関が認められるタンパク質について、その濃度をより正確にELISA等で測定して確認する。有意な相関が認められたタンパク質の機能から、ペプチド生成との関連を考察する。
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Causes of Carryover |
2022年度は円安や原材料価格高騰などの要因で諸物品が予想以上に価格上昇し、特にELISAキットなどの試薬類は単価がかなり高くなった。そのため、次年度に使用が予想されるキット類を十分に購入するために、初年度の経費は必要最小限にとどめ、in silicoの解析に重点を置くなどして節約することで、次年度使用額が生じた。
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