2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of complement-associated biomarkers in neurological diseases
Project/Area Number |
22K07498
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
宮本 勝一 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50388526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 秀文 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20250061)
桑原 基 近畿大学, 医学部, 講師 (40460860)
南野 麻衣 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (40927216)
中山 宜昭 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50590436)
井上 徳光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80252708)
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 補体 / 神経疾患 / 神経免疫 / 視神経脊髄炎 / ギラン・バレー症候群 / 重症筋無力症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は神経疾患の病態における補体の関与について解析し、病態に関与する補体活性を示す新規マーカーを見出し、治療の効果判定や予後を予測できるバイオマーカーを開発することを目的とする。 補体は、ウイルスや細菌などの外敵から生体を守る免疫システムで重要な働きをしているが、その制御が破綻すると疾患の原因となってしまう。神経疾患では重症筋無力症や視神経脊髄炎(NMOSD)は、補体が関与した自己抗体誘導性の病態が想定されている。近年、再発予防治療に補体C5に対する抗体製剤が承認されているが、無効例も存在し、その予測は困難である。補体の活性化経路は、古典経路、レクチン経路、第二経路があるが、これらの神経疾患の病態における補体の詳細な作用機序は明らかにされていない。 今年度は、まずNMOSDの解析から行った。NMOSDは水分子を通すタンパク質であるアクアポリン4に対する自己抗体によって、中枢神経のアストロサイトが破壊され、視神経や脊髄に障害を引き起こす神経疾患である。急性期と安定期のペア血清が保存されている21名のNMOSD患者の補体因子を測定したところ、安定期に比べて急性期でsC5b-9とBaが有意に上昇していた。また補体制御因子CFHは急性期に有意に低下していた。sC5b-9は終末補体経路、Baは補体第二経路の活性化を表すことから、NMOSDでは補体第二経路が活性化しており、制御因子が低下しているため、そのまま終末経路まで補体が活性化し、神経細胞が傷害されることが判明した。 次に、同じく神経免疫疾患であるギラン・バレー症候群でも同様の解析を行った。25名の補体因子を測定したところ、補体第二経路Baは上昇していたが、制御因子CFHが機能しており、その結果、sC5b-9は上昇しておらず終末補体経路は活性化していなかった。 これらの新しい知見は Front Immunol誌に論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時点で3年間の研究計画を立てたが、4項目に分けて研究を遂行する予定とした。初年度は、計画1を終え、計画2と3に着手する予定であった。 計画1は、症例の登録である。代表的な神経免疫疾患である、重症筋無力症、NMOSD、ギラン・バレー症候群の3疾患の症例登録を開始したところ、各疾患とも目標症例数(50~100例)の登録を終えた。その中で、過去に採取された血液検体が急性期と安定期の複数時点がペアで保存されている症例については、計画2に進んだ。 計画2は、補体の測定である。計画1で抽出された症例の検体について、補体活性化因子とその分解産物、制御因子および補体関連分子を測定した。計画2は3年間を通じて行う予定であり、以下の5項目について比較検討する予定である。1)抗C5モノクローナル抗体の効果が認められた症例と認められなかった症例、2)重症例と軽症例、3)補体の活性化の経時的な変化、4)症状の違いによる補体の活性化、5)抗体の種類による違いによる補体の活性化。 初年度は、上記2)3)4)について検討したところ、3)補体の活性化の経時的な変化について、新たな知見が得られた。 具体的には前述の研究実績の概要で記載したとおり、NMOSDの病態には補体第二経路の活性化が重要であり、その原因として補体制御因子が低下していることを明らかにした(Miyamoto K, et al. Complement biomarkers reflect the pathological status of neuromyelitis optica spectrum disorders. Front Immunol. 2023 Mar 3;14:1090548.)。 一方、ギラン・バレー症候群では補体制御因子は機能しているため終末補体経路は活性化していなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画3は、新規マーカーの開発である。初年度の研究成果を受けて、補体第二経路の活性化や制御に関する因子が候補に成り得ると考えられるため、これらに関連する因子についても新規マーカーとしての可能性を検証する。 計画3は当初の予定では、3つある補体の活性化経路のうち、古典経路とレクチン経路については単独で評価できるマーカーが開発されていないことから、これらの経路の活性化を表す新規マーカーを見出すことを目標としていた。これらの経路の活性化を個別に評価することができれば、既知の第二経路の評価マーカー(Ba)と合わせて補体全体の病態を知ることができる。 本研究では、古典経路とレクチン経路の共通マーカーとしてC2aやC2b、古典経路の単独マーカーとしてC1rとC1sをターゲットとし、これらのモノクローナル抗体を作成する予定である。モノクローナル抗体は、従来通りの方法で行なう予定である。具体的にはアジュバントと抗原を混合してマウスに免疫し、脾臓細胞のB細胞と不死化ミエローマ細胞を融合させハイブリドーマを作製する。96穴プレートで培養し、上清の抗体活性をスクリーニングし、特異抗体を産生する細胞を選択する。さらに、限界希釈法でモノクローナル抗体産生細胞を樹立し、その細胞より抗体産生・精製して完成させる。 次に、これらの活性化産物に対する抗体を使って、ELISA系を確立し、古典経路やレクチン経路によって引き起こされる補体活性化を評価する。条件設定後は、実際の患者検体を用いて、各神経免疫疾患の活動性を評価できるかどうかを検討する。 計画4は、前向き研究である。初年度に見出した知見を踏まえ、前向き研究での検証を行う。倫理委員会に前向き研究の申請を準備している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため予定していた国際学会の出張ができなかった。このため次年度以降の出張に振り替える予定である。 また、購入予定の試薬、特に海外からのものはコロナ禍の影響で納品の目途が立たなかったため購入できなかった。これらは次年度に購入することになった。
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Research Products
(2 results)