2023 Fiscal Year Research-status Report
高速原子間力顕微鏡を用いた凝集タンパクのクロス・シーディング効果の時空間的観察
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22K07514
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小野 賢二郎 金沢大学, 医学系, 教授 (70377381)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / レビー小体病 / アミロイドβ蛋白 / αシヌクレイン蛋白 / 高速原子間力顕微鏡 / 電子顕微鏡 / 免疫沈降 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病やレビー小体病(パーキンソン病、レビー小体型認知症)では、アミロイドβ蛋白(Aβ)やαシヌクレイン蛋白(αS)の単独あるいは混合で形成された凝集体が関与している可能性が示唆されている。本研究では、AβやαSの重合核(シード)を用いた異種蛋白間での凝集反応(クロス・シーディング)の検討を行い、その凝集促進効果の有無や機序を明らかにすることを目的として研究を展開している。 AβとαSのセルフおよびクロス・シーディングにおいて、各蛋白のシードの調整法がその凝集反応速度に影響を及ぼす可能性を考え、昨年度、種々の方法でAβ42やαSのシードを調整し、チオフラビンT(ThT)を利用した系でセルフ・シーディングについて検討した。その結果、各蛋白で調整法により凝集反応に差がみられることを明らかにしている。一方、ThTを利用した系でAβ42とαSとのクロス・シーディング反応では、凝集促進効果を示す条件を見い出すことができなかった。本年度では、更なる条件検討により、αS-シードとAβ42-LMWを用いた場合に、クロス・シーディングの凝集促進効果がみられ、特にαS-シードの存在割合を増加させた場合に、その促進効果が大きくなることを明らかにした。また、電子顕微鏡でも、αS-シードの存在割合を増加させた場合に、クロス・シーディング反応の凝集促進効果により線維形成の増加が認められた。その他、αS-シードとAβ42-LMWとのクロス・シーディング反応の溶液状態での凝集反応をHS-AFMを用いて動的に観察することができた。更に、αS-シードとAβ42-LMWとのクロス・シーディング反応により形成された線維について、免疫沈降およびSDS-PAGEを利用し、その線維の構成蛋白を解析したところ、形成された線維はαSおよびAβ42から構成されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Aβ42やαSのサンプル調整では、種々の条件検討により、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて各蛋白のlow molecular weight(LMW)画分(主としてモノマーが存在する画分)を効率的かつ再現性よく分離することが可能となった。 各蛋白のLMW画分を用い、37℃下で静置あるいは振とう、撹拌、ガラスビーズ存在下などの条件で凝集反応を行いシード調整した。昨年度、ThTを利用した系で各シードを用いたセルフ・シーディング反応の検討から、振とうあるいは撹拌条件下で調整したシードを用いた場合に、凝集反応の反応速度が速くなることを明らかにしている。しかし、Aβ42とαSを用いた異種蛋白間での凝集反応(クロス・シーディング反応)において、凝集反応を促進させる条件を見い出すことができなかった。本年度では、ThTを利用した系で種々の条件検討した結果、αS-シードの調整法よりもその存在割合を増加させた場合に凝集反応が速くなることを明らかにした。また、同様な条件下で経時的に電子顕微鏡で形成された線維を評価したところ、クロス・シーディング反応の場合に線維形成が促進されることを明らかとした。その他、HS-AFMを用いたαS-シードとAβ42-LMWとの凝集反応の溶液状態での動的観察について、種々条件検討したところ、動的観察が可能な条件を見い出すことができた。更に、抗αS抗体を用いて、αS-シードとAβ42-LMWとのクロス・シーディング反応で形成された線維を免疫沈降し、SDS-PAGEで解析したところ、形成された線維はαSとAβ42とで構成されていることが明らかとなった。効率的なクロス・シーディング反応の条件検討に時間を要したことから、現在までにHS-AFMでαS-シードからの直接的なAβ42の線維伸長は観察できておらず、HS-AFM評価系における条件の最適化が必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Aβ42-シードとαS-LMWとのクロス・シーディング反応は、種々の条件検討でも凝集促進効果はみられなかったことから、今後は、αS-シードとAβ42-LMWとのクロス・シーディング反応を中心に検討する。まず、αS-シードの調整法(pHや塩濃度、緩衝液など)を再検討し、ThTを用いた系でクロス・シーディング反応が促進される最適な条件を検討する。これらの条件を参考に、HS-AFMを用いて、クロス・シーディング反応の経時的な評価や、αS-シードからの直接的なAβ42の伸長の動的観察を計画している。また、クロス・シーディング反応の円偏光二色性(circular dichroism: CD)スペクトルで蛋白の2次構造を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度予定していたαS-シードとAβ42-LMWとのクロス・シーディング反応のHS-AFMを用いた動的観察の検討で、再現性がみられる条件を見い出すことができていない。また、クロス・シーディング反応のHS-AFMを用いた経時的な評価も必要と思われる。これらHS-AFMを用いた評価系で最適条件の検討に時間を要していることから次年度使用額が生じた。本年度でαS-シードとAβ42-LMWとのクロス・シーディング反応のHS-AFMを用いた評価系における最適条件の検討を最優先に行う予定である。
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Research Products
(72 results)