2022 Fiscal Year Research-status Report
視床型プリオン病の脳内プリオン分布が病理像に及ぼす影響
Project/Area Number |
22K07531
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹内 敦子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00535239)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プリオン病 / クロイツフェルト・ヤコブ病 / in vitro / PMCA法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新たに数例の視床型プリオン病の解析を行った。特に遺伝型プリオン病との併発例に注目し、M232R変異やV180I変異についてPMCA法による解析を行った。その結果M232R変異症例は視床型病態を併発する割合が変異なしの古典的クロイツフェルト・ヤコブ病に比べて高いこと、さらに今回初めてV180I変異との併発例を見出すことができた。一方視床型プリオン病を引き起こすM2Tプリオン分布に関して数例の解析を行い、少なくともM2Tプリオンは脳内に満遍なく分布しており、その蓄積量は潜伏期間の長さに影響されず、また意外なことに視床に特に多く蓄積する傾向も見られなかった。ただし視床型プリオン病であり遺伝型プリオン病の一つである致死性家族性不眠症の患者を除くすべての症例で(4例) 小脳への蓄積量は極めて低く、臨床症状や病理像との比較検討を行う必要性が出てきた。一方でウェスタンブロット法によって検出されるタイプ2プリオンの蓄積量はむしろ潜伏期間の長さに比例して多くなる傾向があった。これは明らかに視床型プリオン病の病理像とウェスタンブロット法で検出される総プリオン量とは関連がないことを強く示唆する結果となった。病理像との関連はまだ解明されていないが、ウェスタンブロット法で検出されるタイプ2プリオンはPMCA法で検出されるM2Tプリオンとは異なり下オリーブ核の神経細胞脱落を引き起こさないタイプのプリオンがかなり多くの割合で含まれていることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
視床型プリオン病の脳内プリオン分布の解析を行う過程で、今年度はこれまで見つからなかった新たなプリオン病の併発例を発見した。今年度1例の遺伝型プリオン病であるV180I変異症例について病理学的検査を行ったところ、下オリーブ核の神経細胞脱落が顕著であることがわかった。この部位の神経細胞脱落は視床型プリオン病に特徴的な病理像であることからPMCA法によるM2Tプリオンの増幅を試みたところ、10%感染脳ホモジネートを100,000倍に希釈したサンプルからもPMCA法によりM2Tプリオンが増幅され、V180I変異の遺伝型プリオン病と視床型プリオン病が併発していることが証明された。以上の結果から、PMCA法によるM2Tプリオンの検出の試みは、当初のM2Tプリオンの脳内分布の解析のみならず全く新しいプリオン病の併発例の発見につながることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当研究室で収集したクロイツフェルト・ヤコブ病患者の脳についてPMCA法による解析を続け、M2Tプリオンが検出される例については部位別のPMCA法によるM2Tプリオンの定量及び病理像との比較を行う。
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Research Products
(2 results)