2023 Fiscal Year Research-status Report
ヘモグロビン由来マリファナ様物質の脳内作用機序と社会性障害治療効果
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22K07563
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
田中 健二朗 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30552260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 弘 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (20415582)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヘモプレシン / バソプレシン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、当研究グループはヘモプレシンがマウスの社会的アプローチ行動を減少させることを見出した。今年度はヘモプレシン類が社会行動の制御に関わるとされる視床下部の下垂体後葉ホルモン産生細胞の活動に及ぼす影響について解析した。雄性ddYマウス(12週齢)にVD-ヘモプレシン(2 umol/kg BW)、ヘモプレシン(2 umol/kg BW)または溶媒(生理食塩水)を腹腔内投与してケージに戻し、樹脂製の透明な有孔板を隔てて同種の他個体に曝露した。2時間後、マウスを麻酔下にて灌流固定して脳を摘出した。これらについて免疫組織化学法を用いて視床下部のバソプレシンまたはオキシトシン産生細胞におけるFos蛋白質の発現を計測したところ、ヘモプレシン投与群の視床下部バソプレシン産生細胞のFos陽性数はコントロール群と比較して有意に低下していた。一方、ヘモプレシン投与群のオキシトシン産生細胞におけるFos陽性数、VD-ヘモプレシン投与群のバソプレシンおよびオキシトシン産生細胞におけるFos陽性数に有意な変化は認められなかった。これらの結果からヘモプレシンは社会的刺激に対する視床下部バソプレシン産生ニューロンの反応を抑制する可能性が示唆された。視床下部ニューロンのシナプス前膜にはカンナビノイドCB1受容体が発現していることが分かっていることから現在、ヘモプレシンがCB1受容体を介してバソプレシン産生細胞の活動を制御する可能性について検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘモプレシン類が社会行動の制御に関わるとされる下垂体後葉ホルモンの産生細胞の活動に及ぼす影響についてマウスの脳を組織学的に解析し、ヘモプレシンが社会的刺激に対する視床下部バソプレシン産生細胞の反応を抑制する可能性を示すなど一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘモプレシンはマウスの社会的アプローチ行動を減少させ、社会的刺激に対する視床下部バソプレシン産生細胞の反応を抑制した。同ペプチドは脳内カンナビノイドCB1受容体に対するインバースアゴニストであることから、ヘモプレシンは脳内CB1受容体を介してバソプレシン産生細胞の活動を抑制することにより社会行動の制御に役立つ可能性がある。今後はヘモプレシンの脳内作用機序について検討するためにヘモプレシンの脳室内投与を行い、これが社会行動や社会的刺激に対するバソプレシン産生細胞の反応に及ぼす影響、あるいは視床下部における生化学的変化(グルタミン酸およびGABAのリリース)について多角的に解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
試薬や実験動物、旅費等について想定していた費用と実際にかかった費用との個々の差の総和によって次年度使用額が生じたが、研究全体としてはおおむね計画通りに進んでいる。当該助成金は次年度、円安や燃料価格の高騰などを受けて値上がりしている物品等の購入費用の補填に充てる。
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