2023 Fiscal Year Research-status Report
思春期における精神疾患のリスク形成過程の解明:脳波を用いた縦断研究
Project/Area Number |
22K07573
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
切原 賢治 東京大学, バリアフリー支援室, 准教授 (80553700)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 思春期 / 脳波 / ミスマッチ陰性電位 / 聴性定常反応 / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、思春期を対象にミスマッチ陰性電位(mismatch negativity: MMN)と聴性定常反応(auditory steady-state response: ASSR)および関連する指標を包括的かつ縦断的に測定し、思春期におけるMMNやASSRの発達が精神疾患のリスクを形成する過程を明らかにすることを目的とする。 思春期を対象にMMNとASSRおよび認知機能、メンタルヘルス、環境要因に関連する指標を包括的かつ縦断的に測定するプロトコールは発表済みである(Okada et al., Psychiatry Clin Neurosci, 2019)。具体的には、思春期の一般集団から研究参加の同意を得たうえで脳波を記録した。聴覚オッドボール課題中の脳波からMMNを、40Hzのクリック音提示中の脳波からASSRを測定した。また、認知機能、メンタルヘルス、環境要因に関連する指標も取得した。得られたデータについて、MMNやASSRの縦断変化と認知機能やメンタルヘルスの縦断変化がどのように関連するかなどを調べている。その結果、思春期におけるMMNの縦断的変化が心理的困難さの縦断的変化と関連することを明らかにした(Usui et al., Cereb Cortex, 2023)。 MMNやASSRと精神疾患との関連では以下の結果を得た。20Hzの刺激に同調して出現するγオシレーションは統合失調症の早期段階で低下していなかった(Tada et al., Neuropsychopharmacol Rep, 2023)。ASSRは健常者では大脳白質が保たれていることと関連しているが、それらが統合失調症で障害されていた(Koshiyama et al., Schizophrenia, 2024)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東京ティーンコホートの参加者を対象にリクルートし、脳波を用いてMMNやASSRを計測するとともに認知機能やメンタルヘルスに関する指標を調べる。脳波計測や指標の取得は2年おきに行う。得られた結果を解析して、MMNやASSRと認知機能やメンタルヘルスとの関連を調べる予定であった。しかし、2022年度は新型コロナウイルス感染症の影響でデータ収集がやや遅れている。2023年度はデータ収集が進んでいるが、総合的にやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
東京ティーンコホートの参加者を対象にリクルートし、脳波を用いてMMNやASSRを計測するとともに、認知機能、メンタルヘルス、環境要因に関連する指標を収集する。脳波計測や指標の収集は2年おきに行う。得られたデータについて、MMNやASSRおよび認知機能やメンタルヘルスが年齢とともに縦断的にどのように変化するか、MMNやASSRの縦断変化と認知機能やメンタルヘルスの縦断変化がどのように関連するか、MMNやASSRが認知機能やメンタルヘルスを予測するか、環境要因などがMMNやASSRおよび認知機能やメンタルヘルスにどのように影響するかなどを調べる。得られた結果を学会や論文で発表する。 脳波計測等にあたっては、感染対策を十分に行ったうえで実施する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響は落ち着いてきたものの、その時の未使用分があったこと、既存の物品で使用可能なものがあったことなどから次年度使用額が生じた。 次年度の研究費は、劣化した電極の買い替え、脳波測定に必要な物品、参加者への謝金、測定や解析に必要なPCやソフトウェア、学会発表の際の参加費や論文発表の際の英文校正や投稿料、その他印刷費などに用いる予定である。
|