2022 Fiscal Year Research-status Report
SNAP-25のリン酸化がストレス反応機構において果たす役割の解明
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22K07601
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
山森 早織 北里大学, 医学部, 講師 (30464803)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ストレス / タンパク質リン酸化 / 神経伝達物質 / SNAP-25 / 行動異常 / 海馬 / 遺伝子改変マウス / SNAREタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、強いストレスに直面した後に、その恐怖記憶が繰り返し想起され心身の疲弊が生じる。PTSDの発症機構は十分には解明されておらず、恐怖記憶の保持に関わる機構を明らかにすることは大きな課題となっている。本研究では、強いストレスにより脳内で誘導されるSNAP-25のリン酸化の意義と行動への影響を解明することを目指す。 これまでに身体的あるいは心理的な、強いストレスによりマウスの脳の特定の領域でSNAP-25のSer187のリン酸化が上昇することを明らかにしている。 令和4年度は、①強いストレスによりSNAP-25のリン酸化を生じるシナプス伝達経路について解析を行った。リン酸化SNAP-25抗体および、各神経伝達物質を放出するニューロンのマーカー分子の抗体を用いて、強いストレスを受けたマウスの脳の蛍光二重染色を行い、リン酸化の誘導に関与する可能性のある神経伝達物質を特定した。さらに、マウスの脳室内に、候補となる神経伝達物質を生体内濃度で投与して脳内のSNAP-25のリン酸化の変化を解析した。 また、②SNAP-25のリン酸化による種々の神経伝達物質の放出の制御について解析を行った。脳より調整したシナプトソームを用い、神経伝達物質の放出能の差を解析するシステムの構築には成功した。野生型マウスのベースのSNAP-25のリン酸化は低いため、プロテインキナーゼCの活性化剤を併用してSNAP-25のリン酸化を上昇させ、野生型マウスとSNAP-25非リン酸化型のノックインマウスの比較を試みたところ、数種の薬剤を検討したが膜の透過性に影響が生じることが明らかになった。そのため、SNAP-25恒常的リン酸化型のノックインマウスの作成を開始し、このマウスを利用して目的を達成するよう計画を変更した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、令和4年度に①SNAP-25のリン酸化を生じるシナプス伝達経路の解析を、令和4年度~5年度にかけて②SNAP-25のリン酸化による種々の神経伝達物質の放出の制御の解析を予定していた。そのため、計画変更はあったがおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
①強いストレスによりマウス脳内でSNAP-25のリン酸化を誘導する機構の解析により、SNAP-25のリン酸化の誘導に関与する可能性が高い神経伝達物質を見出すことができた。この結果を今後の解析にも役立てる。 ②SNAP-25のリン酸化を介した種々の神経伝達物質の放出の制御の解析は①において関与が示唆された神経伝達物質の放出に特に着目して解析を行う。また前述のように、SNAP-25の恒常的リン酸化型のマウスを作成し、これを利用した解析を行う。令和5年度から開始する、③SNAP-25のリン酸化による細胞膜への分子発現の制御の解析では、①において関与が示唆された神経伝達物質の受容体にも着目する。また、令和5年度より開始する、④SNAP-25のリン酸化による行動の制御の解析にむけて、恐怖記憶の保持の測定試験に用いるSNAP-25非リン酸化型のノックインマウスと野生型マウスの個体数も確保できている。その翌年度には課題②で作成するSNAP-25の恒常的リン酸化型のマウスによる検証も可能となると想定している。
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Causes of Carryover |
高額となるアイソトープ(放射線ラベルされた神経伝達物質)の購入に学内経費からの補助が得られた。新たに必要となった遺伝子組み換え動物の作成に充当する。
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