2022 Fiscal Year Research-status Report
血小板のBDNF放出能の変化に着目した慢性疼痛とうつ病のバイオマーカー開発
Project/Area Number |
22K07618
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
石井 貴男 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40404701)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性疼痛 / うつ病 / バイオマーカー / 脳由来神経栄養因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、慢性疼痛とうつ病の共通する病態基盤として、神経可塑性の変化に注目して、慢性疼痛の治療効果判定に使用できるバイオマーカーの開発を目指す。具体的には、①慢性疼痛の集学的治療における精神医学的な治療(精神療法、心理教育、薬物療法)を確立し、②その治療前後での慢性疼痛患者の血液サンプルを用いて、生物学的効果判定指標になりうる分子の検討を行うことを目的としている。 当該年度では、診療において心理教育の改善やactivity-pacingなど認知行動療法をベースとした精神療法を取り入れることにより、日常生活における活動量の増加、抑うつの改善などの治療成績の向上がみられた。次年度以降においては、精神科作業療法を組み入れることにより日常生活動作の精確な評価と治療介入を行う予定である。今後は、後述の生物学的指標を含め、より客観的な指標を用いて治療前後での比較を試みる。 生物学的指標の検討に関しては、健常者の血液サンプルを用いた予備的検討を行った。当初は血小板細胞中のBDNF(脳由来神経栄養因子)量の比較や分泌量の変化を検討する予定であったが、加えて、血液中の脳細胞由来exosomesにも着目して検討を進める。近年、細胞間シグナル伝達分子の輸送ツールとしてexomeの果たす役割が明らかになり、内部の蛋白質、mRNA、miRNA分子の変動が疾患の診断・治療のツールになることが期待されている。申請者も、健常者血液サンプルからCD17/NCAM-L1-Biotin抗体にStreptavidin-microbeadsを反応させ、MACSを用いて脳細胞由来exome分画を得ることができた。今後は、うつ病の病態基盤と関連するBDNFおよび転写抑制因子NRSFの脳細胞由来exome分画内における発現の変化を慢性疼痛患者の治療前後で比較検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者が異動になり、研究の進捗に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
患者からの血液サンプルの収集は可能な状況にある。本年度前半中に、サンプル収集と解析を開始する。当初予定していた血小板中のBDNFだけではなく、血液中のneural cell-derived exosomesにある神経栄養因子に関連する分子の解析も行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れたため、物品の新規購入はなかった。次年度は、解析数が増えることと、脳細胞由来exosomeの解析も追加するので、その分の物品購入費を用いる予定である。
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