2023 Fiscal Year Research-status Report
FLASH陽子線治療の基礎的検討と臨床研究への展開
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22K07642
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芝本 雄太 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (20144719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 禎治 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40415526)
村井 太郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00747602)
岩田 宏満 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (40611588)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | FLASH / 陽子線治療 / 超高線量率照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高線量率陽子線照射による細胞のFLASH効果を探求する研究のために、本年度は、細胞実験に利用する超高線量率陽子線照射条件の決定及び細胞照射のプレ実験を実施した。住友重機械工業株式会社の西条工場に設置されている、最大1,000 nAの超高線量率陽子線照射を可能とする超電導サイクロトロン及び照射システムを利用した。タフウォーター板の発光現象をCMOSカメラでリアルタイム計測するシステムを開発した。70-355 Gy/sの線量率で細胞照射実験に必要な2.5 cm照射野線量分布の均一性及び絶対線量を評価した。また、プレ細胞照射実験の実施によって、コロニーフォーメーション法の手順確認を行った。 名古屋陽子線治療センターにおける実験では、鶏卵(有精卵)を孵化直前まで成長させてから、正常雛の脳と消化管に対して、CTによる位置決めを行った。その上で超高線量率照射と通常線量率照射をそれぞれ行い、組織ダメージの軽減および消化管死などについてFLASH効果を確認した。LETの違いを利用してSOBP形成部分で照射で行うと、超高線量率照射の毒性軽減が若干低下した。また、短時間の間隔をあけた照射を行い、その効果の確認を行った。 さらにCAM assay により、鶏卵(有精卵)に腫瘍細胞の移植を行い、増大した腫瘍塊に対して超高線量率照射と通常線量率照射を行った。照射後にそれぞれ腫瘍塊を摘出し、固定後に組織切片を作成して病理組織評価とアポトーシス評価を行った。またショウジョウバエに対して超高線率照射と通常線量率照射をそれぞれ行い、マイクロアッセイにより、炎症系など表現型の違いを確認した。 国際共同研究としてのConformal FLASHの臨床試験に向けて、実施方法やプロトコールに関する協議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の施設では、装置メーカーとの話し合いの結果、実際のFLASH照射が可能となるのは2024年5月の装置アップグレード後ということになったため、この装置を用いての研究開始が遅れている。一方、研究代表者と研究分担者の関連施設(住友重機械工業株式会社西条工場)では陽子線FLASH照射が可能となったため、2024年度に本格的な実験を開始する予定である。グローバルなFLASHの臨床治療の試験については、IBA本社チームと連携して準備を進めており、本課題の研究期間中に開始できる見込みとなっている。 鶏卵(有精卵)を用いた生物実験に関しては、移植した腫瘍塊に対して超高線量率照射と通常線量率照射を行い、組織切片を作成、組織評価とアポトーシス評価を行ったが、照射後の固定の影響のため、正しい評価ができていない可能性があった。またカスパーぜによるアポトーシス評価が適していない可能性が示唆されたため、評価方法を変える必要が考えられた。低酸素環境での培養細胞の評価には、照射野拡大した超高線量率で照射を行う必要があり、実験準備に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
住友重機械工業株式会社西条工場において、陽子線FLASH照射の細胞および物理実験を進めて行く。種々の腫瘍および正常細胞に対するFLASH照射による線量ー効果曲線を正確に求め、高線量域で効果の飽和度を確認する。またIBA社製装置ProteusONEを用いて、FLASH照射の線量評価の正確性に関する物理実験を行う。CAM assayによるin vivo環境での腫瘍に対する評価をTunel法で照射後の評価時間を変えて行う。照射野を拡大した超高線量率照射を低酸素環境下の培養細胞で評価や正常組織の組織学的な評価を行いたい。また照射野拡大を視野にリッジフィルターの開発を行っていく予定である。国際共同研究として、Conformal FLASHの臨床試験に向けた準備をさらに進めて行く。
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Causes of Carryover |
前述のように研究計画の遅れがあるので、予算執行が遅れている。2024年度からは生物・物理実験の回数が増えるので、物品費などの使用が増える予定である。また実験のために愛媛県西条市への宿泊を伴う出張を予定しており、情報収集や成果発表のための学会参加も行って、旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)