2022 Fiscal Year Research-status Report
超高線量率照射(FLASH)に対応した放射線治療用小型線量率計開発
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22K07644
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
山口 哲 岩手医科大学, 医学部, 助教 (10611006)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小型線量率計 / Siフォトダイオード / FLASH / 超高線量率照射 / 放射線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は線量率計の基礎特性評価に必要不可欠な実験用X線発生装置および遮蔽ボックスの設計を製造業者と行い、汎用X線管を使った高線量率での評価が可能な特注品の実験装置を製作し、本年度の10月に本学に納品して測定実験を開始している。一方で、線量率計の製作のために必要な電子部品とプリント基板を別途発注し、部品実装を終えた初期評価用の小型線量率計を製作した。本線量率計では線量率計回路に内蔵する抵抗値によって増幅率が変わるため本実験目的に最適な条件を調べる目的で内部抵抗を変更した数種類の線量率計基板を製作している。また、本試作基板による線量率計測実験では放射線を検知するセンサー部での位置精度が極めて重要となる。このため、実験装置に固定でき、試作した線量率計のセンサー部の正確な測定距離がわかる特殊な治具を製作する目的でスナップメーカー社製の3Dプリンターを購入し、本線量率計を高精度で固定できるアクリル板を用いた治具を独自に製作した。必要な実験環境が準備できたので、次に納品した実験装置と製作した線量率計基板および治具を用いた線量率計測実験を計画どおり実施している。これまでのところ今回試作した線量率計では暫定で約0.6 Gy/sまでの計測ができていることを確認した。また、この実験環境を構築している一方で、前年度にユニバーサル基板で簡易的に製作した線量率計を使用した医療用リニアックによる測定結果の検証も実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ユニバーサル基板で簡易線量率計を製作し医療用リニアックで測定した結果では医療用リニアックで最大の線量率(約0.4 Gy/s)を使用する10MVのFFF(フラットニングフィルターフリー)モードでの線量率計測が可能であることを確認した。しかしながら、現在の放射線治療分野では標準で使用できる線量率計が無いため、具体的にどの程度までの線量率が本線量率計回路で計測できているのかを別の方法で評価する必要がある。また、ユニバーサル基板で製作した線量率計には測定にノイズ成分が含まれていることも判明している。そのため、次のステップとして当初の実験計画どおり測定ノイズの軽減を目的としてプリント基板上に本線量率計回路を実装した小型線量率計を新規に製作し、本年度の10月に納品された実験装置による線量率の測定と校正を試みている。今回納入した実験装置ではこれまでの調査により推定で約1.0 Gy/sまでの線量率が出力されており、現行の医療用リニアックで使用している線量率(約0.1~0.4 Gy/s)の検証実験が可能であることを確認している。現在までのところ、試作した小型線量率計では暫定で0.6 Gy/sまでの線量率計測が可能であることが判明している。ただし、測定できる線量率に上限があるのは試作した小型線量率計の電圧出力の計測に使用しているADC(アナログデジタルコンバータ)が3.3Vまでしか計測できないためで、この制約によりそれ以上の線量率が計測できていない。本小型線量率計に使用しているセンサー(Siフォトダイオード)は原理的により高い線量率計測が可能であるため、線量率計回路の内部抵抗を変更し増幅率を軽減した小型線量率計での測定実験が今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に実施した実験では、現在使用しているADCの制約により高線量率側(約0.6 Gy/s以上)が本小型線量率計で計測できていないことが問題となった。しかし、現在使用しているADCをより高電圧測定が可能なタイプに変更するか、もしくは回路に使用している抵抗値を下げて増幅率を減少させることにより、この問題は容易に解決できる。そのため、デジタルオシロスコープによる検証と、線量率回路内部の抵抗値を変更し増幅率を変えた小型線量率計が計測できる線量率の上限を調査する予定である。また、今回製作した小型線量率計の線量率依存性について実験し評価結果をまとめる。それら基礎特性評価が完了後に、本小型線量率計を固体ファントム中に挿入し、現行の治療用X線もしくは電子線による線量率分布計測を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは前倒し支払請求を行ったことによるものである。理由は前倒し支払請求の内容に述べたとおり、本年度の研究計画を進めるために必要であったスナップメーカー社製の3Dプリンターを購入したためである。使用残額については前倒し支払請求時の計画どおり、令和5年度での国内旅費等に使用する。
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