2023 Fiscal Year Research-status Report
超高線量率照射(FLASH)に対応した放射線治療用小型線量率計開発
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22K07644
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
山口 哲 岩手医科大学, 医学部, 助教 (10611006)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Siフォトダイオード / 小型線量率計 / フラットニングフィルターフリー / dose per pulse / instantaneous does rate / FLASH / 放射線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は4月にパシフィコ横浜で開催された第125回日本医学物理学会学術大会にて本研究の初年度におけるユニバーサル基板を用いた研究データの演題発表を行った。その後、昨年度に設置した特注のX線管実験装置を用いてプリント基板による線量率基板回路の線量計を幾度か試作し管電流および管電圧依存性の評価および計測できる最大線量率評価を行った。5月には試作した線量率計の医療用リニアックによる計測を実施した。線量率計測には汎用の医療用リニアックで最大線量率が出力できる10MVフラットニングフィルターフリーモード(FFF)での計測を実施した。リニアック測定データの解析結果から線量率の計測に用いていたmbedのアナログデジタルコンバータ(ADC)のサンプリング時間(10ms)では医療用リニアックから出力されるパルスを十分に検知できていないと判断し、ADCの制御プログラムを書き換えて、mbedに搭載されているADCで可能な最小のサンプリング時間である1.0msでの計測ができるように線量計を改良した。改良した線量率計の管電流および管電圧依存と最大線量率評価を実施した後、6月に医療用リニアックによる計測を再度実施している。期待していたパルスデータが得られたため、深さ依存性の追加実験を実施した。測定データを詳細に解析し本邦初のSiフォトダイオードセンサを用いた医療用リニアック専用の線量率計として論文にまとめ、10月に海外の学術誌であるRSI (Review of Scientific Instruments)に初投稿している。一方で解析結果から今回使用したADCでは性能がまだ不十分であったため、より高性能なADCを9月に追加購入した。さらに線量率計回路基板の改良を行い12月頃には高精度での計測ができる新設計の線量率計の製作を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
改良した新設計のSiフォトダイオード線量率計による医療用リニアックでの測定実験を2024年1月に実施した。今回の試作品では高速ADCを使用しているため0.1msのサンプリング時間で計測が行えており、適正にパルス計測が可能であることを確認している。また、本線量率計では回路基板の時定数を変更した数種類の線量率計基板を新たに試作しており、本線量率計の特徴でもある時定数依存性について調査した。計測されるパルス幅が線量率計の時定数により大幅に変わることを確認し、医療用リニアック用の線量率計として適正と思われる時定数を特定した。3月には計測されるパルス波形からdose per pulse (DPP)の線量校正およびinstantaneous does rateの算出を目的として医療用リニアックの出力特性(MU依存性)および深さ依存性の評価を実施している。現在はこれらの計測されたデータの解析を実施中である。また、2023年の10月に投稿した論文については幾度かの改訂の後に受理(アクセプト)されたため、2024年5月に学術誌に掲載予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、改良版の新型線量率計による医療用リニアックの測定データを論文としてまとめて今年度中には論文投稿を行う予定である。また、2024年9月に名古屋で開催される第128回日本医学物理学術大会に本研究の演題登録をした。本大会は日韓合同の国際的な学術大会であり、採択されれば当大会にて研究成果を発表する予定である。今後の方針として、これまでに検証可能であった線量率計測は汎用の医療用リニアックまでであり、最終目標としている超高線量率照射での検証ができていない。本施設には超高線量率照射(FLASH)で実験できる施設が無く今後の課題となっている。そのため、これまでの研究成果を広く公表し、超高線量率照射場での実験が行える共同施設を模索する。また、X線管においても工業用X線管であれば高出力な装置が市販されているため、それらのX線発生装置による超高線量率照射の実験装置が実現可能かどうかを今後検討する。
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Causes of Carryover |
残高は研究を遂行する際に適時必要となりうる消耗品の電子部品購入用として残しておいたものである。現在、新製品のSiフォトダイオードセンサが浜松フォトニクスから市販されているため、この購入費用として2024年度に使用する。
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