2023 Fiscal Year Research-status Report
実験動物モデルを用いた照射後心毒性解析と治療薬開発
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22K07673
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50338159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
公田 龍一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00464834)
小池 直義 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60464913)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射線照射 / 実験動物 / 照射後変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は前年度に引き続き実験動物(マウスBALB/c)に対する放射線照射の反応と組織変化を探索した。前年度の課題として、①マウスの一部で、照射後早期に死亡例が観察された(急性期の肺炎ないし肺水腫疑い)、②心嚢水貯留を発症する症例が少数で観察が不十分であった。この2点を解決するための対応として①照射回数を単回照射から複数回照射に変更する、②週齢の高いマウスでの反応を観察する、こととした。マウスは前年度と同様に専用の固定具、金属ブロックを用いて照射用マウスケージ内に保定して、動物用X線照射装置を用いて照射を施行した。照射線量回数を7Gy×5回に設定したところマウスは照射後早期に死亡したため、金属ブロックを改良したうえで6Gy×5回の照射を行った。照射後は8週間おきに小動物用マイクロCTを用いて造影CT画像を取得した。撮像したCT画像データは画像解析ソフトウェアを用いて観察、心臓輪郭描出、容積測定を行った。CT撮像後にマウスの心臓を摘出して組織切片作成(HE、アザン染色)を行い観察した結果、照射後16週の時点で心嚢水(胸水)貯留は前年度より明瞭に観察可能であった。 臨床データの調査として、食道癌放射線治療症例について従来の臨床的患者背景(臨床病期、心血管疾患の既往、年齢性別、喫煙など)に採血データの結果を追加して収集を継続している。CT画像データについては画像の特徴量等を検出するラジオミクス解析の予備解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験動物(マウス)に対する放射線照射は、前年度の課題である照射後の心嚢水貯留あるいは胸水貯留が検出不良である原因を解決するため、週齢の高いマウスの導入と分割照射の導入を試みた。当初設定した線量回数ではマウスが早期に死亡したため線量の低減を行い、金属ブロックの改良も合わせて行ったところ、早期に死亡するマウスはほとんど見られなくなった。現在の投与線量では16週時点で従来より明瞭に心嚢水貯留あるいは胸水貯留が検出できており、妥当な線量投与であったと考えられる。画像解析ソフトウェアを用いた輪郭の描出と画像解析を継続して行っている。以上より動物実験についてはほぼ予定通りの進捗状況であるといえる。 臨床データの調査状況としては、対象症例について必要な臨床データと治療内容、治療後経過を収集している。臨床データの取得に関してはラボデータを追加して取得していることから、予定より多くの時間を要している。画像データの匿名化とDICOMデータの取得はほぼ終了したため、画像特徴量の拾い上げを先行して行いラジオミクス解析の予備解析に着手した。 上記のような結果を得ており、2023年度の進捗状況としては、投与線量回数を修正することで心嚢水貯留の観察が改善されたことと、臨床データにおけるラボデータの追加に時間を要しているものの、全体的な進捗としては、ほぼ予定通りと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)実験動物(マウス)に対する放射線照射 2024年度はまず照射後のマウスの状態について継続して観察し、照射後32週までのCT画像取得と組織切片作成を行う。前年度までと同様に心嚢水(胸水)貯留の有無と組織変化に着目して観察する。CT画像と組織所見との対比を行い、両者の共通の特徴についても探索する。前年度に提示した条件のうち週齢、複数回照射の条件を変更することで心嚢水(胸水)貯留検出が改善されたことから、従来の条件で得られたCT画像、組織切片とも対比を行い変化の有無を検索する。動物モデル胸部照射後の組織学的変化が再現性よく確認できる照射モデルを確立する。照射モデルを確立できたら最終目標としている心毒性・肺毒性を低減可能な治療薬剤を探索する。 2)心嚢水貯留に関する臨床データ解析 まずラボデータを追加した臨床データ取得を完遂する。放射線照射データを含めた臨床データに加え画像特徴量を追加したデータを用いて、心嚢水貯留予測モデルを作成する。予測モデルは心嚢水貯留以外に、予後についても予測を試みる。治療後のCT画像データ収集についても取得を継続し、時間軸を有するデータを取得して変化について調査する。胸部の心血管構造を描出し治療前後の心臓の容積や心筋の厚みなどの変化を解析する。特に無症候の時点における変化を拾い上げることで放射線照射後の予兆となるような所見、早期診断可能な所見を探索する。経時的な画像特徴の変化についても検出を試みることで、有害事象進行のメカニズム解明を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたが、効率的な資材購入などを行ったこと、予定していた国内学会へ都合により参加できなかったことがある。また、購入予定であった放射線照射心毒性・肺毒性を低減可能な治療薬剤候補については、照射後変化を十分観察するため翌年度に購入を予定している。その他、次年度使用計画として、実験動物購入費、照射後変化の解析費に充てることのほか、効率的に研究を進捗させるための人件費、謝金等への充当を予定している。
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