2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of the Direct Observation Method of Boron-dose Distribution for QA in BNCT
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22K07697
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
納冨 昭弘 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80243905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 良憲 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (20273534)
田中 浩基 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (70391274)
若林 源一郎 近畿大学, 原子力研究所, 教授 (90311852)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) / ホウ素線量測定 / 液体シンチレータ / 冷却型CCD・CMOSカメラ / 直接的光学観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、我々が世界で初めて成功した、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のQA/QCのための、ホウ素添加液体シンチレータを用いたホウ素線量分布の直接的光学的観測手法を、臨床のBNCTの照射場での測定に応用するための基礎的な研究を行うことを目的としている。 先行研究で行った測定は、京都大学複合原子力科学研究所の研究用京都大学原子炉のE-3水平照射ポートで行った原理検証実験であった。E-3水平照射ポートは、血液中のホウ素濃度を即発γ線解析により測定する為に設置された中性子照射ポートであり、γ線の混入がほぼない、純粋な熱中性子ビームが得られる。しかし、実際の臨床のBNCT場では、より高エネルギーの熱外中性子が主成分であり、中性子源から放出されるγ線や水と中性子の核反応に起因するγ線が存在している。このため、ホウ素線量以外に、反跳陽子線量やγ線線量の寄与が大きいと考えられる。そのような環境でホウ素線量を正確に抽出するための手法を開発することが必要であり、本研究の重要な課題のひとつである。 また、熱外中性子ビームの場合には、中性子の熱化の過程を通じて、その到達領域が水中深度で10cm程度まで達するので、より広い領域を一度に測定する技術が必要である。シンチレータファントムの容器には、ホウ素を含んでいない石英ガラスを使用することが理想的であるが、石英ガラスは通常のホウケイ酸ガラス等に比べて、加工が困難であり、大型の石英ガラス容器を入手することは、技術的にも費用的にも困難がある。また、たとえ大型の石英ガラス容器が得られても、ホウ素添加液体シンチレータの体積を大きくすると、それに含まれるホウ素の影響でも本来の中性子分布が擾乱をうける可能性があり、単純にスケールアップすればよい訳では無く、何らかの解決方法が望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、大阪医科薬科大学関西BNCT共同医療センターの加速器BNCTの臨床用中性子場で測定を実施した。小型の石英ガラスバイアルにホウ素を添加した液体シンチレータを封入したファントム(インスタゲル・ブラスにホウ酸トリメチルをホウ素濃度で1%添加したもの)を用意し、アクリル製水ファントム中で位置を走査しながら、CCDカメラで発光の観測を行った。ホウ素を添加しない同形状の液体シンチレータを同様に走査して、液体シンチレータのみの場合の発光も観測した。前者と後者の差分をとることにより、ホウ素中性子捕獲反応に起因する発光成分(ホウ素線量成分)の深度分布を0cm~10cmの範囲で抽出することに成功した。評価されたホウ素線量分布は、金箔放射化法により実験的に取得した熱中性子分布、並びにモンテカルロシミュレーションコードPHITSで計算したホウ素線量分布とよい一致を示した。 一方、上記測定において、ホウ素線量による発光と同程度の発光が、ホウ素を添加していない液体シンチレータでも観測された。これは、γ線ならびに熱外中性子の反跳陽子の寄与によるものと考えられる。つまり、この手法は、ホウ素線量以外の線量評価にも利用できる可能性があることが示された。また、水ファントム全体に渡って、液体シンチレータファントムの位置に依存しない連続的に分布する発光が観測された。これは、水ファントム中の水素の中性子捕獲反応に伴って発生する2.2MeVγ線に起因するチェレンコフ光であると考えられ、ホウ素線量分布の正確な評価の為には、適切に差し引く必要がある。 上記結果を、原著論文としてまとめる作業を行っているが、諸般の事情により遅れており、早い時期に、学術論文誌に掲載されることを目指している。以上より、研究計画は概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究で、臨床BNCTの照射場において、本手法が適用可能であることが示された。しかし、今回行った測定では、1回の中性子照射時間は2~3秒で画像が取得できたものの、小型の液体シンチレータファントムを1cmずつずらしながら10回以上の測定を行ったため、液体シンチレータを移動させるのに手間がかかり、3時間程度の時間がかかった。これは、従来の金箔放射化法の実施時間に比べると短いものの、CCDカメラを用いた2次元測定の特性が生かされておらず、日々のQA/QCに応用するには、更に短時間で一度にホウ素線量分布を取得する手法が望まれる。一方、ホウ素線量に基づく発光をより明瞭に観測するためにホウ素濃度を単純に高くすると、本来の中性子分布に擾乱が及ぶ可能性があるため、単純に石英ガラス容器を大きくすればよいわけでは無いこともわかった。 今後の研究の方向としては、次のふたつを考えている。ひとつは、入手可能なできるだけ大きな石英ガラス容器を利用して、ホウ素添加濃度を低くした液体シンチレータで観測を行うことである。10cmx10cmx10cm程度の石英ガラス容器は入手可能なので、シミュレーション計算で応答を見積り、ホウ素添加濃度を変化させながら実際に熱外中性子場で測定を繰り返す。もうひとつは、直径数mm程度の細長い石英管にホウ素添加液体シンチレータを充填した「ストロー型ファントム」を試すことである。ホウ素濃度が高くても、ストロー型にしてホウ素添加液体シンチレータの体積を小さくすれば、ホウ素の影響による擾乱の影響が抑制できることがモンテカルロシミュレーションにより予想されており、理想的にホウ素線量分布を評価できる可能性がある。この場合、金箔放射化法と同様に1次元分布の測定になるが、複数のストローファントムを用いることにより擬似的に2次元の情報を得ることも検討する。
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Causes of Carryover |
研究分担者が、予算執行する適当な支出項目がなく、次年度使用することとなった。次年度になったら、研究代表者と相談してできる限り速やかに予算執行する予定である。
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Research Products
(5 results)