2023 Fiscal Year Research-status Report
新規C-11標識薬剤合成システムを用いたD体アミノ酸による感染症診断法の開発
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22K07709
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Research Institution | Shiga General Hospital Clinical Research Center |
Principal Investigator |
加川 信也 滋賀県立総合病院(臨床研究センター), 画像研究部門, 主任研究員 (10393191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 智緒 滋賀県立総合病院(臨床研究センター), 画像研究部門, 上席専門研究員 (40347464)
東 達也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 分子イメージング診断治療研究部, 部長 (50324629)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / メチオニン / PET / 標識合成 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の蛋白質を構成するL-アミノ酸の光学異性体であるD-アミノ酸が近年様々な分野で注目されており、D-アミノ酸PET製剤であるD-[methyl-11C]methionine (D-[11C]Met)は、腫瘍診断だけでなく細菌感染症の評価に対しての有用性が期待される。本研究では、D-[11C]Metの標識合成を新規に開発した迅速簡便法により行い、部品数や準備作業を大幅に簡略化したうえに高収率で不純物の少ない安全な合成法を確立する。さらに、ヒトでの臨床を行うために自動合成装置を用いて安全性を確認し、D-アミノ酸PETイメージングの普及拡大を目指す。 今回、L-[methyl-11C]methionine (L-[11C]Met)及びD-[11C]Metの標識及び製剤化部工程の開発を行った。Loop法による L-[11C]Met及びD-[11C]METの合成は、On-column法に比べて放射化学的収率や純度が高かった。[11C]メチルトリフレートやMCXカラムを用いた合成は収率が非常に高く、前駆体の違いはわずかであり、アスコルビン酸の添加は放射化学的純度を安定させた。L-[11C]Met及びD-[11C]METは、放射能15 GBq以上、合成時間15分以内、L体の異性体混入量は1%以下であった。今回開発したL-[11C]Met及びD-[11C]METの合成法は、使い捨てカラムを用いて分離精製が可能であり、今後の臨床での有用性が非常に期待される方法であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、様々な標識及び精製法の組み合わせを用いて、L-[11C]Met及びD-[11C]METの合成法を確認した。[11C]METの標識合成は、JFEエンジニアリング社製のカセット式多目的合成装置を用いて行った。前駆体であるHomocysteineもしくはHomocysteine thiolactone hydrochlorideを用いて[11C]CH3Iもしくは[11C]CH3OTfによりメチル化反応を行った後、使い捨てのカラムを用いた固相抽出による精製を行い、L-[11C]Met及びD-[11C]METを合成した。 続いて、前駆体の量や種類、標識法、精製法、添加剤等の様々な条件を考慮し、効率的で信頼性の高い標識合成法を確立した。L-[11C]MET及びD-[11C]METの合成は、放射能: 16.4 ± 1.8 GBq及び18.0 ± 2.6 GBq、合成時間15分以内、異性体混入量は1%以下であり、合成終了後60分を超えても放射化学的純度は95%以上と非常に安定であった。また、本法は簡便かつ蒸留水による洗浄操作が可能であり、不純物も少ないことが確認され、今後の臨床での有用性が非常に期待される方法であった。
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Strategy for Future Research Activity |
前駆体の量や種類、標識法、精製法、添加剤等の様々な条件を考慮し、効率的で信頼性の高いD-[11C]METの標識合成法を確立する。続いて、新たに開発する[11C]CO2回収法(使い捨てのスパイラルチューブ等)により、カセット式自動合成装置に最適で、作業が大幅に簡略化されて1日に複数回の薬剤の合成を可能とするシステムを構築する。 本研究で開発した新規合成法によるシステムについて、薬剤委員会及び倫理委員会で承認を得るような安全性試験を行い、国内外の合成装置メーカーに新たな製造技術や製品開発に結び付けるような合成方法を開発する。さらに、 D-アミノ酸PETイメージングを目的として、D-[11C]Met-PETを用いた画像評価の有用性を検討するため、腫瘍及び感染症モデルマウス等を用いた評価を行い、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
令和5年度は、使い捨て及びHPLC用カラムに関し、様々な検討を行わなかったが、令和6年度以降に、最先端カラムを使用して、至適分離・精製方法に関する詳細な検討を繰り返して行う予定である。 (使用計画)臨床応用に向けた標識合成のため、出発原料等の試薬、分離・標識合成用カラム等の試薬・消耗品が絶対条件である。放射性薬剤の標識・分離・精製に必須なHPLCカラム等は高価である。新規合成された薬剤は前臨床段階として、マウスを用いその有用性を検討する。PETダイナミックスキャン及び全身像を撮像するための費用が必要である。さらに画像診断解析法確立には、膨大な画像データの処理・解析のための特殊なソフトウェアを搭載したコンピュータ機器の設置が必須であり重要である。
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