2022 Fiscal Year Research-status Report
プリン受容体活性制御による放射線細胞障害強度コントロール法の確立
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22K07780
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
月本 光俊 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (70434040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 康宏 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員 (00588676)
北畠 和己 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (40910732)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射線治療 / プリン受容体 / がん / 放射線増感剤 / 放射線防護剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放射線治療の向上を目指し、プリン受容体の活性を制御することで、がん細胞と正常細胞それぞれの放射線細胞障害強度を同時にコントロールする新規治療戦略の分子基盤形成を目的とする。本研究ではがん細胞でのP1受容体(A2B受容体等)阻害と正常細胞でのP2受容体(P2X7やP2Y12受容体等)刺激を組み合わせることで、放射線治療時に各細胞のプリン受容体活性を最適な状態へ制御し、がん細胞のDNA修復能を減弱させ、かつ正常細胞のDNA修復能を促進させ、放射線治療効果を最大化する新たな治療戦略を確立することを目指す。このような「プリン受容体活性制御による放射線細胞障害強度コントロール法」の確立は、今までにない全く新しい独創性の高い治療戦略であり、本研究ではこの新規放射線治療戦略の分子基盤形成を目標とする。 本研究の研究内容は大きく2つに分類され、「γ線/X線での外部照射モデル」と「α核種での内用療法モデル」を用いたプリン受容体活性制御による放射線細胞障害強度コントロール法についての基盤研究を実施している。 今年度は、まずγ線照射肺がん治療モデルでのプリン受容体活性制御による放射線細胞障害強度コントロール法の確立(外部照射モデル)について研究を実施し、その結果、A2B受容体阻害薬とATPの併用により、肺がん細胞での放射線増感効果と気道上皮細胞での防護効果の両立を示唆する結果を得た。 また、α核種での内用療法モデルでの検討のため、(211)At-MABGを合成し、A2B受容体阻害薬による褐色細胞腫治療促進効果についても検討を行なっている。さらに放射線による骨髄毒性を減弱する薬物についても検討中である。 これらの検討により、放射線治療効果を向上させる新規治療法の基盤形成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、γ線照射肺がん治療モデルでのプリン受容体活性制御による放射線細胞障害強度コントロール法の確立について研究を実施した。ヒト肺がんA549細胞とヒト気道上皮細胞Beas-2bにA2B受容体阻害薬およびATPを処置しγ線照射し、各細胞でのDNA損傷修復と細胞障害度の変化を解析し、殺がん作用増強効果と正常細胞防護効果の両立が可能か検討した。その結果、A549細胞において、A2B受容体阻害薬による放射線増感効果は、ATPの処置により減弱されないことが示された。またBeas-2b細胞においては、ATPによる放射線障害保護効果がA2B受容体阻害薬により減弱されないことが示された。これらの結果から、当初の想定通り、A2B受容体阻害薬とATPの併用により、A549細胞での放射線増感効果とBeas-2b細胞での防護効果の両立の可能性が示唆された。一方、肺がんの細胞種によって作用が異なる可能性を示唆する結果も得られてきている。 またプリン受容体活性制御による(211)At-MABGによる褐色細胞腫治療促進効果と骨髄毒性減弱効果の解明については、(211)At-MABGを合成することができ、A2B受容体阻害薬の褐色細胞腫PC12細胞への効果についても検討を開始できている。またヌクレオチドによる骨髄細胞障害減弱効果についても順調に検討を行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、「γ線照射肺がん治療モデルでのプリン受容体活性制御による放射線細胞障害強度コントロール法の確立(外部照射モデル)」についての研究は、今後、詳細な分子メカニズムや他の肺がん細胞種での検討を行う。一方、肺がんの細胞種によって作用が異なる可能性を示唆する結果も得られてきているため、肺がん細胞のほか、他のがん細胞(乳がん細胞など)との比較も考慮していく。また放射線照射細胞でのA2B受容体を介した細胞遊走能についても着目する。また他のプリン受容体サブタイプについても考慮していく。 次に、「プリン受容体活性制御による(211)At-MABGによる褐色細胞腫治療促進効果と骨髄毒性減弱効果の解明(α核種での内用療法モデル)」についての研究は、(211)At-MABGを合成し、A2B受容体阻害薬による褐色細胞腫治療促進効果について、in vitroやin vivoで検討を行う。その際、A2B受容体阻害薬以外のプリン受容体阻害薬の効果についても考慮する。また放射線骨髄障害の減弱効果については、ヌクレオチドのほか、様々な物質についても合わせて検討を行い、骨髄障害減弱効果の高いものを明らかにする。
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Causes of Carryover |
今年度、順調に進んだ実験系があったため、当初の計画にくらべ、実験試薬や実験器具などの消耗品費を抑制でき、次年度使用額が生じた。しかし2年目に実験動物や実験試薬の購入が多数必要であるため、次年度の消耗品費として使用予定である。
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Research Products
(4 results)