2022 Fiscal Year Research-status Report
放射線療法における後方散乱X線を活用した完全非侵襲体内照射監視システムの開発
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22K07782
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
河原林 順 東京都市大学, 理工学部, 教授 (80283414)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 散乱線 / 放射線治療 / 体内空隙移動検知 / ピンホールカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性腫瘍の放射線治療の際に治療用X線の散乱線を活用した人体内部の空隙移動を検知するシステム構築のため、散乱線をとらえるピンホール型X線カメラのピンホール部分の設計をモンテカルロ計算により実施した。10MeVの入射光子が60度方向に散乱した場合、最大約1MeVの散乱光子を生成するため、最大1MeVの光子をコリメートする能力を最低限のスペックとした。タングステン製のダブルコーン型ピンホールとした場合、10cmの厚みがあれば十分にコリメータとして機能することが確認された。そこで厚さ10cmのピンホールコリメータをタングステン合金にて試作した。 また、ピンホールの設計試作と同時に、治療用X線の散乱線の挙動の実験的検証として、コバルト60からのγ線をアクリルブロックにビーム状に入射し、その90度方向散乱γ線の計数測定を行った。鉛ブロックで作成した平行コリメータでの実験結果ではあるものの、体表部の1cm角の空隙を検出器視線から垂直方向に移動した場合、散乱線の計数の減少が観察された。また、1cm角の空隙を体表部から腫瘍部へ検出器から離れる方向に移動させた場合、散乱ガンマ線計数の変化(空隙による散乱ガンマ線の増加幅が奥に移動にするにつれ徐々に減っていく)が確認された。これにより、検出器を中心とした座標において、検出器より離れる方向と、検出器と平行に移動する方向の2方向の空隙の移動を検知できることが確認された。 なお、試作したコリメータ後方にIPを設置し、コバルト60γ線の散乱線イメージングを試みたものの、ポータブルIP読み出し装置の感度が不足しており(コバルト57線源により実験的に確認)、イメージの取得は不可能であった。次年度はIPによるイメージ取得を試みると共に、CdTe検出器を活用し、90度方向以外の散乱γ線やより人体深部における空隙移動検知の検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピンホール型X線カメラとして、ピンホールコリメータの後方にイメージングプレート(IP)を設置し、ポータブルIPリーダにより画像を読み出すことを当初予定していたが、ポータブルIPリーダ装置の感度不足によりイメージの取得は不可能であることが判明した。そのため、小さなCdTe検出器(5x5x0.75mm)を設置し、一ピクセルの検出器とみなして実験的評価を実施しデータの取得が可能であることが判明した。今後は試作したコリメータも合わせて種々のコリメータ形状の場合と、さらにアクリルブロックを大型化し、人体深部の空隙検知の特性評価を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に90度方向の散乱ガンマ線の特性の評価をある程度実施できたため、今後は以下の3つの方法により検知システムとしての特性評価を進める。 1.IPによるイメージング測定の実施:5枚のIPを用意し、コバルト60照射施設で試作したコリメータの後方にIPを設置して照射した後、研究室にIPを持ち帰り、高感度IPリーダにてイメージの読み取りを試みる。この際にIPのフェーディングが問題となるが、Co57線源を活用し、事前に温度と時間のフェーディング特性を評価しておくことにより補正し、可能な限り定量的な評価となるようにする。 2.CdTe検出器を用いて散乱ガンマ線の特性を評価:90度以外の散乱角の場合や、より人体深部を模擬してより分厚いアクリルファントムを用意し、イメージング特性の限界評価を実施する。特に人体深部の場合は検出限界の悪化が見込まれるため、どの程度の厚さの場合で1cmの変化量に対しどの程度の時間で検知可能となるかの評価を主眼に実施する。また90度以外の前方散乱や後方散乱の場合の特性評価を実施する。 3.CdTe検出器のスキャンによる1次元プロファイルの特性評価:Xステージを用いてCdTe検出器を物理的にスキャンすることにより、一次元ではあるものの一次元イメージの取得を試みる。
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Causes of Carryover |
コリメータの作成に当初予定より時間を要したこと、コロナにより実験実施が後期にずれ込んだこと、IPリーダの感度が予想外に低くそのための対策を講じていたこと等により、当初予定より実験回数が減少し、旅費やコバルト60照射施設使用費が見込みより減少したため。なお、次年度はその分実験回数を増やす予定であり、予定通りの使用となる見込みである。
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