2022 Fiscal Year Research-status Report
ALK陽性未分化大細胞リンパ腫におけるALK阻害剤耐性の機序解明と新規治療の開発
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22K07821
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
深野 玲司 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00403676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 格 京都大学, 医学研究科, 助教 (10610454)
水上 洋一 山口大学, 大学研究推進機構, 教授 (80274158)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 未分化大細胞リンパ腫 / ALK陽性 / ALK阻害薬 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
①「再発又は難治性ALK陽性未分化大細胞リンパ腫患者を対象としたCH5424802の第Ⅱ相試験(アレクチニブ医師主導治験)」に参加した小児・成人のうち、腫瘍の保存検体が確保できた9症例においてリンパ腫生検組織(パラフィン包埋ブロック;FFPE)を収集した。FFPE標本の病理組織像について、山口大学分子病理学 伊藤浩史(研究協力者)と共同で確認を行い、FFPE標本から腫瘍細胞のDNAを抽出した。 ② ①で抽出したDNAを用いて、ALK遺伝子のエクソン23、24、25領域のDNAをpolymerase chain reaction (PCR) にて増幅し、サンガー法によるダイレクトシーケンスを行った後に塩基配列を確認した。エクソン23領域では良好にDNAの増幅を認めたが、アレクチニブ耐性を示した症例に特異的な遺伝子変異を認めなかった。エクソン24、25についてはPCRでDNAを増幅したが、ノイズが多く発生したため塩基配列の特定が困難であった。ダイレクトシーケンスでは変異細胞のバリアントアリル頻度が低い場合は変異を検出できないことを考慮して、次世代シーケンサーによるアンプリコンシーケンス解析を行った。 ③ ALK遺伝子の全領域にあたるエクソン1から29までを増幅し、ライブラリー作製した後にアンプリコンシーケンス解析を行った。アレクチニブを投与中に再発を認めた際に腫瘍組織生検を実施した1症例において、アレクチニブが結合するチロシンキナーゼドメイン内に十分なread countを有するアミノ酸変異を伴う遺伝子変異を認めた。この変異のVAFは24%であり、read countとともに適正に解析が行われていることを示していると判断した。この変異とALK阻害薬の感受性に関する報告はこれまでになく、新しい知見である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象症例の検体を収集し、計画していた遺伝子解析を実行した。遺伝子解析ではダイレクトシーケンス法、全ゲノム解析、アンプリコンシーケンス、ターゲットシーケンスでの解析を行い、アンプリコンシーケンスが本研究の解析において最も適していることを確認することができた。また、アレクチニブに耐性を示した症例の検体において、これまでに報告のない新規の遺伝子変異を検出した。この遺伝子変異について機能解析を行うため、遺伝子変異を組み込んだプラスミドを作成した。次年度はこのプラスミドを用いた遺伝子導入により、アレクチニブ耐性のメカニズムを解明するための機能解析を実施する。次年度の準備も整えることができており、順調に研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
アレクチニブはALK遺伝子のチロシンキナーゼドメインに結合することで、ALK陽性ALCL細胞の増殖抑制やアポトーシスを誘導することにより抗腫瘍効果をもたらす。この作用機序から、アレクチニブに抵抗性を示す症例ではチロシンキナーゼドメインにアミノ酸変異を伴う遺伝子変異があり、チロシンキナーゼドメインの構造変化が生じていることでアレクチニブがALK遺伝子に結合できなくなるという仮説を考えた。この仮説に基づいて、本研究ではALK遺伝子領域を重点的に解析し、アレクチニブ抵抗例のアンプリコンシーケンスでこれまでに報告のないアミノ酸変異を伴う遺伝子変異をチロシンキナーゼドメイン内に認めた。この変異が実際にアレクチニブの抵抗性に関与するかどうかについて、今後機能解析を行う必要がある。現在、付加的な遺伝子変異を有するNPM-ALK遺伝子を持つプラスミドの作製を行い、レトロウイルスベクターを用いてBa/F3細胞株に遺伝子導入することでアレクチニブを含むALK阻害剤への薬剤感受性試験を行う準備を進めている。また、より生体内での環境に近付けるため、ALK陽性ALCL細胞株 (K299) にCRSPR/Cas9システムを用いて遺伝子編集を行うことで付加的な遺伝子変異を生じさせ、同様に薬剤感受性試験やNOGマウスへの移植を行いin vivoでの機能解析を目標とする。
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Causes of Carryover |
現時点で腫瘍組織検体が収集できていない症例があるため、当該の症例に対する遺伝子解析費用について未使用額が生じた。この未使用額については、当該の腫瘍組織検体を収集し、令和5年度の遺伝子解析に用いる費用と合わせて使用する。
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