2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of biomarkers and elucidation of pathophysiology for coronary artery lesions of Kawasaki disease
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22K07881
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Research Institution | Kanagawa Children's Medical Center (Clinical Research Institute) |
Principal Investigator |
成戸 卓也 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 主任研究員 (60438124)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 川崎病 |
Outline of Annual Research Achievements |
重篤な合併症として冠動脈病変(coronary artery lesions: CALs)を残す川崎病は、病因や病態が未だに明らかでない小児期発症で最も多い血管炎症候群である。川崎病に合併するCALsは小児の後天性心疾患の死亡原因第一位であり、死亡に至らなくともCALsの残存は、児のQOLを損ない、成人期の冠動脈疾患合併の高リスク群となるため、CALsの発生に関連するタンパク質を同定し病態メカニズムを解明する。 血清は、最も簡単に診断や病勢を測定できるサンプルだが、アルブミンなど夾雑物が大量に含まれるために未知の分子を探索する網羅的解析には不利だった。タンパク質の網羅的解析(プロテオミクス)は診断解析に有利な理想的サンプル(リキッドバイオプシー)とみなされることから、新規バイオマーカーの同定を試みた。 CALs 症例にてDIA(data independent acquisition)法を用いた次世代プロテオミクス(Q Exactive HF)で解析して症例の蓄積を図る。DIA 法を用いると先行研究(Scientific report. 2017)で用いたDDA(data dependentacquisition)法では抽出できなかった低濃度のタンパク質を多数検体で詳細に検討することが可能である。タンパク質は川崎病と健常児で差がなく、CALs 症例のみで変動するものを3種類を選出した。 選出したタンパク質を2種類をELISA 法で測定し、CALs で優位差があることを検証した。プロテオミクスで解析した初発の検体では、差が見られなかった。しかしながら、CALs症例では時間の経過とともに上昇していることが確認された。プロテオミクスとELISA測定に乖離があるため、これらのタンパク質がバイオマーカーとしての可能性はあるが、初診時においてもっとはっきり差の出る測定系を検討する必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質は川崎病と健常児で差がなく、CALs 症例のみで変動するものを3種類を選出した。選出したタンパク質を2種類をELISA 法で測定し、CALs で優位差があることを検証した。もう1種類は適当なELISAキットがなかったため測定できなかったが想定内である。 プロテオミクスで選出した初発時点の検体はELISAで差が見られなかったが、経時的には上昇していることが確認されているため、引き続きELISAキットの抗原部位や、プロテオミクスのタンパク質のペプチド断片について詳細な検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテオーム解析で抽出された候補タンパク質のなかで、特にCALsに関連性の高いタンパク質について各タンパクの産生細胞および作用を及ぼす標的細胞が、白血球などの免疫担当細胞・血管内皮細胞・平滑筋細胞・支持組織などのうついずれなのかをin vitroで個別に検討し、その後冠動脈病変を形成する病態におけるそれらの細胞群のクロストークを明らかにすることで、病態への関与を明らかにする。 具体的には、各タンパクを主に産生する血管構成細胞種を同定し、その細胞内シグナルが血管病変を促進する可能性があるかを検証する。我々の解析で川崎病との関連を明らかにしたLRG1は主に内皮細胞が産生することが知られているため、HCAECを用いてTGFβシグナルに焦点を当てて、内皮細胞間のバリアの破壊や免疫担当細胞の浸潤が促進されるかを検討し、川崎病におけるCALs形成候補タンパクの病態機序の解明を行う。
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Causes of Carryover |
コロナの影響が引き続き生じているため、海外生産の試薬消耗品に納期未定が多数生じたため、当年度の使用金額が減少した。 なお、納期未定のものは次年度初頭より納品が順次決定されているため、当年度の予定金額分は消化できている。 納品遅れを見越し、次年度は年度前半にできるだけ発注を行う予定である。
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