2023 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAを標的とする小児ミエリン障害の機序解明と新規治療法の開発
Project/Area Number |
22K07882
|
Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
榎戸 靖 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 室長 (90263326)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | オリゴデンドロサイト / リソソーム / ミエリン / マイクロRNA / 神経発達障害 / ライソゾーム病 / エンドサイトーシス / 知的障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小児期の中枢ミエリン障害を症状とするライソゾーム病や知的障害、自閉症スペクトラム障害に着目し、神経発達障害の新たな発症機序解明とその治療応用を目指す。特に、これまで我々が独自に確立した、疾患モデルマウス脳由来のオリゴデンドロサイト (OL)の純粋培養系、ならびに OL 特異的に遺伝子発現を可能とするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター等を用い、各疾患で見られる OL の細胞障害を改善するマイクロ RNAの作用機序、及びその治療効果を分子レベルから個体レベルで解析する。 本年度おこなった研究の実績として、(1) OL において、細胞外から取り込まれたコレステロールをエンド・ライソゾームからゴルジ体へと輸送する細胞内経路とその制御分子を同定した。極めて興味深いことに、ゴルジ体に局在すると予想される当該分子をノックダウンすると、ニーマン・ピック病 C 型のOLに極めて類似したライソゾーム内コレステロール異常蓄積と分化異常が惹起された。(2)クラッベ病マウス OL の分化・成熟異常を改善する前臨床ミエリン形成促進薬(クレマスチンならびにSob-AM2)の効果の一部が、miR-219 を介していることを明らかにした。すなわち、miR-219 阻害剤により、それぞれの薬剤の効果が顕著に抑制された。これらの結果は、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入以外に、ミエリン形成促進薬の投与によっても miR-219 の治療効果が得られる可能性を示唆している。(3) (2)の研究で得られた成果の一部を、英文原著論文として報告した。 本年度はさらに、OL における miR-219 の作用機序の詳細と、昨年度新たに見出された OL 障害を標的とする神経発達障害の治療法開発に向けた解析を、進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に見出された、生後発達時期によって異なるAAVベクターの感染効率や感染部位の違いに起因する実験データのバラツキの問題が解決されておらず、個体レベルの miR-219 の治療効果について解析が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度までに得られた研究実績をもとに、次に示す(1)から(3)の課題について解析を進める。(1)本研究課題で新たに見出された、エンドソームーライソゾームーゴルジネットワークを介するOL内コレステロール輸送経路の詳細と、それらの機能不全が miR-219 の発現と機能に及ぼす影響について、さらに詳細な解析を進める。(2)miR-219の発現上昇に関わる前臨床ミエリン形成促進薬の効果をマウス個体レベルで検証する。また、それらの薬剤の薬理作用について、併せて解析する。(3)miR-219によってOL内で発現制御される遺伝子群のRNA-seq解析を進める。さらにこれらの解析で得られたデータをもとに、疾患モデルマウスOLの病態改善に働く遺伝子群を同定し、その機能を解析する。
|
Causes of Carryover |
試薬および実験材料を同じくする研究協力者から、一部、試料の供与があった。また、マウス飼育費、実験試薬の一部を他の継続研究と共用することができた。さらに、実験スケジュールの変更によって当初予定していた実験を次年度以降に行うことにしたため、その分の使用額が繰り越された。 使用計画については、当初申請額からの減額分に応じて、研究対象とする疾患モデルマウスの種類等を変更する必要が生じたが、研究内容に大きな変更はない。プロジェクトの進行具合に合わせて順次使用していく予定。為替レートの変動や物価高騰により、論文等の出版費や試薬代が高騰する可能性があり、それらとの差額分に充当する。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] A Novel Constitutively Active c:98G > C, p.(R33P) Variant in RAB11A Associated with Intellectual Disability Promotes Neuritogenesis and Affects Oligodendroglial Arborization2023
Author(s)
Tsuneura Y, Kawai T, Yamada K, Aoki S, Nakashima M, Eda S, Matsuki T, Nishikawa M, Nagara K, Enokido Y, Saitsu H, Nakayama A
-
Journal Title
Human Mutation
Volume: 2023
Pages: 8126544
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-