2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the pathogenesis common to neutropenia and B-cell deficiency
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22K07887
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
金兼 弘和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00293324)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 先天性免疫異常症 / 好中球減少症 / B細胞欠損症 / iPS細胞 / ノックインマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球減少症とB細胞欠損症はそれぞれ先天性免疫異常症でしばしばみられる免疫学的異常である。好中球とB細胞はそれぞれ骨髄系幹細胞ならびにリンパ球幹細胞から分化するため、好中球減少症とB細胞欠損症が同時にみられることは理論的にはあまりないと考えられる。しかし先天性免疫異常症では時として好中球減少症とB細胞欠損症がみられることがある。好中球減少症とB細胞欠損症に共通する分子病態を明らかにすることを本研究の目的とする。HYOU1欠損症は重症先天性好中球減少症の一型(OMIM: 601746)として報告されているが、B細胞欠損症を伴う。そこでHYOU1欠損症の分子病態を明らかにすることによって本研究の目的が達せられると予想される。HYOU1欠損症はこ れまでフィンランド人の1例でのみの報告がある(Haapaneimi EM. J Allergy Clin Immunol 2017)。今回は新奇HYOU1遺伝子を有する日本人患者を同定した。既報告では折り畳み不全蛋白と酸化還元反応の異常によって好中球減少症が生じると結論づけているが、B細胞欠損症の病態については未解決のままである。そこで正常iPS細胞にフィンランド人ならびに日本人患者由来のHYOU1遺伝子変異を導入し、好中球に分化させることによって、好中球減少のメカニズムを明らかにする。また患者由来iPS細胞を作成し、遺伝子修復も行い、比較検討しながら、同様の検討を行う。さらにiPS細胞からB細胞へ分化させることは困難であるため、Hyou1遺伝子変異を有するノックインマウスの作製も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人とフィンランド人のHYOU1遺伝子変異(L469PとY231H)をそれぞれ正常iPS細胞にCRISP/Cas9システムを用いて遺伝子導入したところ、それぞれの患者由来 iPSを作成することができた。これらのiPS細胞をさまざまなサイトカインを加えた特殊培地内で培養することによって好中球に分化させたところ、患者iPS由来好中球は健常者iPS由来好中球に比べて好中球に分化する細胞数が少なかった。形態的にアポトーシス様にみえたため、Caspase 3/7活性を調べたところ、アポトーシスが亢進していることが示された。 次に日本人患者から得られた末梢血からiPS細胞を作成した。この患者由来iPS細胞に対してCRISP/Cas9システムを用いて遺伝子修復を行った。患者由来ならびに 遺伝子修復を行ったiPS細胞を前項と同様に培養し、好中球に分化させたところ、遺伝子修復したiPS細胞は健常者由来iPS細胞と同程度に好中球に分化させることができた。遺伝子修復したiPS細胞由来好中球は健常者と同様にアポトーシスがほとんど認められなかった。マウスES細胞にCRISP/Cas9システムでHyou1遺伝子変異をノックさせて、ノックインマウスを作製したが、好中球数やB細胞数の減少は観察されなかった。そこでノックインマウスの好中球ならびにB細胞のin vitroでの機能解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのiPS細胞を用いた研究からHYOU1欠損症における好中球減少症の病態としてアポトーシスの亢進を見出した。今後はHYOU1欠損症以外の重症先天性好中球減少症(ELANE、HAX1, SRP54など)の患者由来iPS細胞と比較検討することで、詳細な病態を明らかにする。ノックインマウスを作製して、好中球ならびにB細胞の数や機能を正常マウスと比較することで、ヒトHyou1欠損症のモデルマウスとしての妥当性を検討し、特に B細胞欠損症の分子病態をトランスクリプトームならびにプロテオーム解析も加えて詳細に解明する。
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Causes of Carryover |
iPS細胞ならびにノックインマウスの作製については主に共同研究施設にて行われていたため、予定より研究費の使用が少なく済んだ。本年度はオミクス解析など当該施設の研究を 推進し、研究成果を国際学会で発表ならびに国際誌に投稿予定である。
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