2022 Fiscal Year Research-status Report
小児多系統炎症性症候群の免疫学的解析とバイオマーカー探索
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22K07909
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松田 裕介 金沢大学, 医学系, 助教 (30882443)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | MIS-C / 多系統炎症性症候群 / 川崎病 / サイトカイン / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児COVID-19関連多系統炎症性症候群 (MIS-C) は、COVID-19に続発して心筋炎やショックなどの多臓器にわたる重篤な炎症病態を引き起こす疾患であり、本邦からも報告例が散見される。その病態はいまだ明らかとなっていないが、川崎病に類似した症状を呈することが知られている。川崎病の罹患率が高い国内では、MIS-CとCOVID-19罹患後の川崎病を臨床的に鑑別することは困難であり、その病態解明や鑑別・病勢把握に有用なバイオマーカーの開発が求められている。本研究では、国内MIS-C症例、川崎病症例、COVID-19症例について、臨床像、サイトカインプロファイル、免疫細胞サブセットを比較することでその相違点を明らかにし、MIS-C診療に有用なバイオマーカーを同定するとともに、その病態を明らかにすることを目的とする。2022年度は、疾患ごとの血清蛋白についてELISA法およびサイトカインビーズアッセイ法を用いて、網羅的に血清蛋白の測定を行った。結果、IFN-γ、neopterin、IL-18、IL-10、可溶性TNF-RⅠ、可溶性TNF-RⅡ、MCP-1、MIP-1a、VCAM-1、Granzyme A、Granzyme Bが川崎病と比較してMIS-Cで有意に高値だった。一方で、IL-17A、IL-17FはMIS-Cでより低値だった。これらのサイトカインの比較によって、MIS-Cと川崎病の鑑別が可能になるものと考えられた。また、サイトカインプロファイルの違いは、2つの疾患の病態が異なる可能性を示しており、MIS-Cだけでなく、いまだ不明である川崎病の病態解明に寄与するものと考えられる。今後は、サイトカインだけでなく、免疫担当細胞の表面抗原や細胞内蛋白を解析することでさらにその免疫学的特徴を明らかにすることを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はMIS-C症例、川崎病症例、COVID-19症例のサイトカイン解析を予定していた。現在のところ、上記症例の急性期の血清を集積し、ELISA法およびサイトカインビーズアレイ法を用いて、網羅的なサイトカインプロファイル解析を行った。研究結果について、現在英文誌に投稿準備中である。症例集積、解析ともに順調に進行しており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はMIS-C症例およびKD症例の免疫細胞サブセットを比較することを目標に、MIS-C症例、KD症例の急性期の末梢血における免疫細胞サブセット解析を行う。単球、T細胞、B細胞、NK細胞などのそれぞれのサブセットを詳細に解析し、その共通点ならびに相違点を明らかにする。特に、MIS-C症例ではサイトカイン解析にて、Granzyme高値を認め、MIS-Cの病態に関与していることが示唆される。したがって、NK細胞における細胞表面マーカーや脱顆粒の評価、サイトカイン産生についてもフローサイトメトリーを用いて、解析をすすめる予定である。また、MIS-Cや川崎病ではIFN-γがその病態形成に関与することが示唆れているが、Ⅰ型IFNの関与については明らかとなっていない。一方で、COVID-19ではⅠ型IFNがその重症化に関与していることが示されている。海外からMIS-C症例の中にI型IFNに関与する蛋白の先天的な異常によってMIS-Cを発症した症例が報告されており、MIS-CとIFNのかかわりについても単球の免疫学的解析を用いて、研究をすすめることを予定している。
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Causes of Carryover |
2022年度から免疫細胞サブセット解析も段階的に開始しているが、2022年度下半期からCOVID-19流行が収まってきた影響もあり、臨床検体の収集が減少した。解析症例が予定よりも少なかったことで抗体などの消耗品の支出が抑えられた。2023年度からは、保存検体の解析も進める予定であり、消耗品の購入費用に次年度使用額を充てる予定である。
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