2022 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスによる神経細胞死とてんかん発症機序に関する多層オミックス解析
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22K07914
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大守 伊織 岡山大学, 教育学域, 教授 (20403488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内田 守 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (80213635)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 神経細胞死 / てんかん |
Outline of Annual Research Achievements |
活性酸素種ROSを消去する作用をもつチオレドキシンTxn1の遺伝子改変動物(Txn1-F54L遺伝子変異ラット)を用いて、中脳で神経細胞死がおきるときの病態基盤の一端を明らかにした。線維芽細胞であっても、培養液に過酸化水素を添加して酸化ストレスを与えると変異型では細胞死が誘発された。このことは、細胞死がおきるメカニズムは局所で酸化ストレスが増大した環境になっていることが推測された。中脳で神経細胞死がおきる時期にメタボローム解析を実施し、病変の出現しない大脳皮質と代謝変化を検討した。その結果、中脳では解糖系、TCA回路、ペントースリン酸代謝、核酸代謝にかかわる97物質が皮質よりも1.4ー8.4倍、有意に高かった。このことから、局所で発生するROSが適切に処理できなくなったときに細胞死が誘導されている可能性が示唆された。 また、てんかん発作が集積する時期に、神経伝達物質を測定し、興奮系が優位になって発症している可能性は否定された。免疫染色により、てんかんについては、アストロサイトやミクログリアの活性化が著しく、これらのグリア細胞が影響していると考えられた。てんかん発作の記録を行ったところ、強直発作、欠神発作、部分発作が観察された。Txn1-F54L遺伝子変異ラットは、combined generalized and focal epilepsyに分類され、これまでにない新しいてんかんモデルであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を学会等で発表し、以下の論文を公表することができた。 学会発表:A Txn1 missense mutation links to epilepsy with vacuolar degeneration Ohmori I, Ouchida M, Toyokuni S, Ishida S, Mashimo T. 39th Congress of the International Union of Physiological Sciences (IUPS) 2022年5月7日 論文発表 1. Iori Ohmori, Mamoru Ouchida, Hirohiko Imai, Saeko Ishida, Shinya Toyokuni, Tomoji Mashimo. Thioredoxin deficiency increases oxidative stress and causes bilateral symmetrical degeneration in rat midbrain. Neurobiology of disease 175 105921-105921 2. Iori Ohmori, Mamoru Ouchida, Masakazu Shinohara, Kiyoka Kobayashi, Saeko Ishida, Tomoji Mashimo. Novel animal model of combined generalized and focal epilepsy. Epilepsia 63(7) e80-e85
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度は、神経変性を惹起するTxn1-F54Lの蛋白構造解析を行う。Txn1には相互作用を持つ蛋白の酸化還元を制御するactive siteが存在する。F54の場所はこのactive siteと離れた部位に存在している。F54L変異によって、どのような構造変化が生じて、チオレドキシン結合蛋白が変化するのかを探索する。
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Causes of Carryover |
生化学実験が順調に進んだこと、国際学会発表がオンライン参加となり旅費が少なくなったこと、モデル動物であるラットの飼育が順調であったことが重なり、研究費の次年度への繰り越しが生じた。
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Research Products
(4 results)