2022 Fiscal Year Research-status Report
小崎過成長症候群患者iPS細胞由来脳血液関門モデルを用いた疾患メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K07922
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
奥野 博庸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70445310)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | PDGFRb / 患者由来iPS細胞 / 小崎過成長症候群 / 脳血液関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に小崎らにより新規に発見された小崎過成長症候群について、患者由来iPS細胞をもちいて、病態解析および創薬研究をすすめている。3患者より協力をいただき、樹立したiPS細胞を用いて解析をすすめている。 患者では、PDGFRB遺伝子の特異的な遺伝子変異を呈することが知られている。同じ遺伝子の別変異で、本疾患と全体としては異なる表現型を呈するが、臓器によっては似た表現型を呈する。本患者で頭部MRI上で脳室周囲に異常シグナルを認め、PDGFRB遺伝子は脳血液関門の構成細胞である周皮細胞のマーカーであり、脳血液関門の部分的な破綻が生じていると考え、脳関門を構成する周皮細胞、血管内皮細胞に分化誘導した。 また本遺伝子の体細胞変異により、脳動脈瘤が生じることが2019年に報告された。本患者にも画像検索で、心臓冠動脈瘤、脳動脈瘤が認められている。これらの動脈瘤において、異常出現部位としてpericyteも関与している。 健常者由来iPS細胞より、CD31 ,vWF陽性血管内皮細胞を分化誘導により確認できた。患者由来細胞よりは分化誘導効率が低く、作成過程におけるsphere形成能が低いことがわかった。 iPS細胞よりsphere形成を行う際に用いる培地を変更することで、sphere形成効率が上昇することがほかの研究データより分かっており、現在あらたな培地を用いたsphere形成を試みている。また患者由来細胞より、周皮細胞への分化誘導の作成に成功した。分化誘導した細胞について、分子細胞生物学的な解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目標としてた、健常由来iPS細胞より血管内皮細胞および周皮細胞への分化誘導に成功した。また患者由来細胞も同様に分化誘導を行い、誘導効率が低いことを明らかにした。現在は、さらに実験をすすめ、培地を変更し、分化誘導効率を上昇させることを試みている。また当初2年目として計画していた分化誘導した健常人および患者由来周皮細胞を用いた遊走解析をすすめているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、患者iPS細胞由来血管内皮細胞の分化誘導効率の上昇を進める。分化誘導した周皮細胞、血管内皮細胞を共培養し、tight junction マーカー(claudin5, occuludin)を指標として血管内皮細胞の結合を比較し、脳血液関門の異常について調べる。 患者および健常者由来周皮細胞の違いについて、われわれが構築しているxCelligence機器を用いた経時的なtranswellアッセイ、IncuCyte機器をもちいたwound scratchアッセイ、timelapse顕微鏡を用いた個々の細胞の遊走アッセイを行い、患者特異的な表現型の探索をおこなう。また誘導した細胞について、RNA-seqによる遺伝子発現解析を行う。患者群、健常者群を比較し、解析に焦点をあてる部位を絞る予定である。
|
Causes of Carryover |
本計画の中に、患者iPS細胞由来血管内皮細胞への分化誘導し、誘導した細胞の解析を行う予定であった。分化誘導が低いことにより、誘導した細胞解析をする予定から、分化誘導効率を上げる計画に重点を移して実験を進めた。次年度に、誘導効率を上げたのちに、誘導した細胞の解析をすすめる予定であり、当該解析費用として、本年度より繰り越して使用する予定である。
|