2022 Fiscal Year Research-status Report
知的障害MRD43の症状顕在化に対する外部環境ストレスの影響
Project/Area Number |
22K07952
|
Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
高木 豪 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害モデル研究部, 主任研究員 (70300879)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 知的障害 / モデルマウス / 環境要因 / 社会的ストレス / 多動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIVEP2 (Schnurri-2) 遺伝子の常染色体優性型de novo変異は中重度の知的障害であるMRD43 (Mental retardation, autosomal dominant 43)の発症に関与する。これらの症例には知的障害以外に多動性、衝動性を伴う症例も一部に含まれていた。本研究では、MRD43の症状発症にgene-environment interactionが関与し得るかどうか検討する目的で、モデルマウスの疾患関連行動への環境的な要因の影響を検討する。本年度は思春期ステージ(4週齢)のMRD43モデルであるHIVEP2ヘテロ変異マウスに慢性的な社会的ストレス、隔離ストレスを4週間与え、行動学的な解析を行った。新規環境下での行動量を測定するオープンフィールドテストを用いて10分間の移動距離を測定したところ、グループ飼育したコントロール条件下では野生型とモデルマウスで移動距離に有意な差は見られなかった。一方、ストレスを付加した条件下では野生型とモデルマウスは共にグループ飼育のものより移動距離の増加が見られたが、増加の程度はモデルマウスがより大きかった。この結果より多動性に関係するモデルマウスの症状は社会的な環境要因によってより影響を受けることが明らかとなった。別の行動実験として行った衝動性を評価するクリフアボイダンステストでは、思春期における社会的ストレスの有無によるモデル特異的な明確な変化を見られず、どちらの条件でもモデルマウスは野生型より高い衝動性を示す傾向が見られた。以上の結果からMRD43の症状発症にgene-environment interactionは関っているが、その相互作用は全ての関連症状に押し並べて影響を与えるものではなく、環境要因と影響を受ける疾患症状の間には個別の関連性があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題ではMRD43のモデルマウスの症状発症における環境要因の影響を検討することを研究プロジェクトの大きなポイントとしている。複数の環境要因に対するモデルマウスの症状発症を検討する予定であるが、本年度はまず社会的な要因の一つである隔離ストレスの検討を行い、興味深い結果を得ることができた。今後、隔離ストレスを与える時期や他の社会的ストレスを与えた時の影響などを検討する際に、今回の結果は参照データとして役立つと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、社会的ストレスのMRD43の症状発症における影響について二つの観点から実験を実施する予定である。まず一点目は隔離ストレスを与える時期の影響について検討を行うことである。本年度は思春期のモデルに社会的ストレスを与えたが、成獣に到達後に与えた時の影響について検討を行う予定である。また二点目として隔離ストレスとは異なる社会的ストレスの影響を検討することである。具体的には、新生児期に24時間の母性剥奪を受けたマウスにおける成長後の影響について、隔離ストレスの時と同じ行動実験の系を用いて評価する予定である。
|
Causes of Carryover |
行動実験用のモデルマウスの用意のための繁殖が若干スムーズにできたため、飼育費用と見込んでいた費用が若干余った。年間に購入しているマウスの餌代の2%弱の金額分であり、来年度以降の実験計画にほとんど影響はないと思われる。
|