2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K07956
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 綾 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50786621)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 一細胞解析 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
α―フェトプロテイン(AFP)産生胃がんのオルガノイドは分化培地(Wnt, R-spondin, Noggin非添加)で培養を行うと、肝細胞様と腸管様の二方向性に分化することがこれまでの一細胞RNA解析により、明らかになった。この細胞分化がどの転写因子がどの様な機構で制御しているかを明らかにすることを本研究の目的としている。 まず一細胞ATAC解析によりクラスター解析を行い、一細胞RNA解析とのデータ統合を行った。その結果、肝細胞様クラスターではHNF4Aモチーフが濃縮するが、腸管様細胞クラスターでの濃縮が見られなかった。この時、肝臓様クラスターと腸管様クラスターでHNF4Aの発現は大きくは変化しなかった。 またHallmark解析により、これらの二つのクラスターの分岐でWNTシグナルおよびepithelial-mesenchymal transition(EMT)シグネチャーが濃縮しており、何らかの重要な変化が起きていると考えられた。そこで変化を引き起こすエンハンサーを同定するために、確実に発現変化とクロマチンオープン領域を紐づけることができる一細胞Multiome ATAC/RNA解析を行った。これにより、一細胞RNA解析で得られたクラスター特異的に亢進する遺伝子のエンハンサーおよびリプレッサーの探索が可能となった。 また、ATAC解析よりモチーフ濃縮がみられるHNF4Aについて、アイソフォーム特異的なノックアウトを行い、それぞれのアイソフォームによる制御遺伝子の違いを同定するためにHNF4AのChIPを行った。この結果とMultiomeで得られた、エンハンサー領域との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Multiome解析は最近確立された実験手法であるため、まず解析ツールの検討から始めた。ArchR, SnapATAC2, SignacおよびScenic plusの4ツールを本研究で得られたデータを用いて検証した。その結果、これまで行っていた一細胞RNA-seqの解析ツールおよび、付随する解析であるATACピークと遺伝子発現の統合が可能となるため、Scenic plusを採用した。この解析に結果により、AFP産生胃がんでこう発現しているSALL4遺伝子に対する、エンハンサーおよびリプレッサー領域を推定し、その領域にHNF4Aが結合していることを見出した。またHNF4Aはアイソフォームがあり、それぞれP1およびP2プロモーターを使用する。P1およびP2特異的にノックアウトし、ChIPを行うとSALL4のエンハンサーおよびリプレッサー領域において肝臓様クラスターと腸管様クラスターでHNF4Aの結合に差があることを見出した。このことは、AFP産生胃がんオルガノイドの二方向性の分化に寄与していることを示した。 よって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
AFP胃がんオルガノイドの細胞分化は、細胞の培養密度により肝細胞様、腸管細胞様への分化割合が変わることが分かった。今回Multiomeに使用したサンプルは肝細胞への分化傾向が低いため、一部の遺伝子の発現が弱くエンハンサーの同定が困難であった。そのため、細胞分化の条件を最適化し再びMultiome解析を行う。また、オルガノイド塊において、肝細胞および腸管細胞が局在するかを同定するために、それぞれの特異的マーカーを選び出し、蛍光免疫染色にて明らかにする。
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Causes of Carryover |
オルガノイド培養に使用するマトリジェルや試薬を他研究員から譲り受けたため、購入費を節約することができた。また、参加した学会が近郊であったため旅費が抑えられた。
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