2022 Fiscal Year Research-status Report
胆管がん腫瘍再増殖の予防法確立を目指したエクソソーム蛋白活性化機構の解析
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22K07979
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 隆 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40464010)
坂田 純 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70447605)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 胆管がん / エクソソーム / ゲムシタビン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、胆管がんにおける化学療法後の腫瘍再増殖(TR)現象を、エクソソーム制御により予防する方法を確立することである。本研究では、この目的をさぐるために、i) 予備検討で明らかになった、胆管がんエクソソームの化学療法後のセリン・スレオニンキナーゼp38MAPK活性化機構を検討するとともに、ii) 化学療法休薬中のがんエクソソーム蛋白を網羅的解析して、p38MAPKの以外のTR促進因子の探索も行うことを計画した。 本年度においては、上記の実験計画i)を主に行った。具体的には、胆道がん細胞(胆管がんHuCCT1、胆のうがんNOZ)に抗がん剤(ゲムシタビン、シスプラチン)を投与し、エクソソーム量・活性(増殖/転移促進)を解析するとともに、エクソソーム内部のp38MAPKのリン酸化レベルをウエスタン・ブロット法を用いて解析した。 その結果、胆管がんのエクソソーム分泌量は抗がん剤刺激で1.7-3倍程度に増加していたが、エクソソーム内部のp38MAPK含有量は、有意な変化を認めなかった。一方、p38MAPKのリン酸化レベルは10数倍に増加しており、化学療法で刺激されたがん細胞のエクソソーム内部では、p38MAPK経路が著明に活性かしていることが明らかになった。次に、エクソソーム内部のp38MAPKシグナル経路をさらに詳細に調べたところ、がん抑制遺伝子p53変異を伴うHuCCT1細胞においては、p38MAPKの下流シグナル因子であるMAPKAP-2も同様に10-15倍レベルに活性化していることが明らかになった。以上の結果をもとに、次年時以降はp53-p38MAPK-TR現象の関連をさらに探索するとともに、上述の実験計画ii)も併せて行う予定である。 なお、以上の実験は、既存の試薬・機器・消耗品を用いて行えたので、当該年度での支出を可能な限り抑えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、実験計画i)胆管がんエクソソームの化学療法後のセリン・スレオニンキナーゼp38MAPK活性化機構の検討を、順調に行うことができた。 検討した結果により、胆管がんエクソソーム内部のp38MAPKのリン酸化レベルが著明に増加していることを見いだし、さらには、がん抑制遺伝子p53変異を伴う場合では、p38MAPKの下流シグナル因子であるMAPKAP-2も同様に活性化していることを明らかにできた。得られた結果は、予備検討である程度予測されていたものであり、また実験計画に沿うものである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実験結果から、エクソソームのp38MAPK活性化が、胆管がんの薬剤耐性に深く関与していることが明らかになった。そこで次年度以降は、今度はどうすれば薬剤耐性を克服できるかという目標を掲げ、p38MAPKを制御できるエクソソーム拮抗剤を見いだす計画をたてている。 i) 最初に、p38MAPK阻害剤のTR現象に対する効果を確認する目的で、胆管がん細胞株HuCCT1や胆のうがんNOZに対して数種類のp38MAPK阻害薬と抗がん剤(ゲムシタビンetc.)による併用療法を行い、殺細胞効果と化学療法後に生き残ったがん細胞の再増殖スピードを計測する。 ii) 次に、p38MAPK拮抗作用をもつ既知の医薬品を用いて、胆管がんの薬剤耐性への軽減効果を検討する。 iii) 上記i)ii)実験と並行して、当初の実験計画の2番目の柱である、化学療法休薬中のがんエクソソーム蛋白の網羅的解析を行い、p38MAPKの以外のTR促進因子の探索も行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の実験においては、予備検討で得られた結果を詳細に解析した。このため、得られる結果はある程度予測できたので、当該施設で保有している、既存の機器・試薬・消耗品を用いて行うことができた。 一方、次年度からは、エクソソームの活性化タンパクの網羅的解析を行う予定である。予備検討は行っておらず、想定よりも大幅に解析結果が異なるか、あるいは有用な候補タンパクを見いだせずに、複数回実験を繰り返す必要性が高い。このため、当初の研究計画で算定した予算よりも、網羅的解析に関する試薬(1回の実験で50-60万円計上・この実験を少なくとも2回繰り返す必要がある)に関する予算の計上が必要と考える。
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