2022 Fiscal Year Research-status Report
膵癌進展の病態伝播を担う細胞外小胞の機能解明~臨床応用を目指して~
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22K07982
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
坪井 順哉 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (70829324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 暁子 三重大学, 医学系研究科, 特任准教授(研究担当) (00598980)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞外小胞 / 膵がん |
Outline of Annual Research Achievements |
膵がんのEUS-FNA検体、36検体から細胞外小胞(EV)を回収し、calceinで染色し、flow cytometryにてintact EV数を測定した。採取したEVはその後カラムを用いて精製し、サイズの測定も行った。また、コントロールとして自己免疫性膵炎(AIP)6例の残余検体からEVを回収した。ステージⅠ~Ⅳ、AIPの比較を行ったところ、EV数の平均はステージⅠ:13578 particles/ul、ステージⅡ:11227 particles/ul、ステージⅢ:14708 particles/ul、ステージⅣ:9176 particles/ul、AIP:10246 particles/ulであり、ステージⅠ、Ⅱに比べⅢは高くなるが、ステージⅣでは減少を認めた。EVの平均サイズについてはステージⅠ:275nm、ステージⅡ:288nm、ステージⅢ:307nm、ステージⅣ:277nm、AIP:255nmであり、ステージⅢまでは上昇し、ステージⅣで低下を認めた。今後さらに検体を追加して解析する予定である。 当初は、膵がん患者から得られたEVをヒトのがん関連線維芽細胞(CAF)などに添加し、細胞の活性化を細胞形態や遺伝子発現の変化により検討する予定であったが、EUS-FNA残余検体から得られるEV数が極めて少なかったため、ヒト膵がん細胞株を用いてEVを回収する方針とした。ヒト膵がん細胞株はPanc-1、MIA-Paca-2を使用した。膵がん細胞増殖に関わるサイトカインとして既知のIL-1β、IL-6、TNF-αを用いて膵がん細胞株の刺激を行ったところ、いずれのサイトカインにおいてもEVの放出を認めた。このことは、膵癌の病態進展に寄与するサイトカインによりEVが放出されることを示唆している。現在、EVを放出するサイトカインの至適濃度を調整中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿って、ある程度予定通り遂行できている。 ヒト膵がんのEUS-FNA検体およびコントロールとして自己免疫性膵炎の検体から細胞外小胞(EV)を回収し、EV数とEVサイズの測定を行い、解析した。 ヒト膵がん細胞株を用い、膵がんの細胞増殖に関わる既知のサイトカインを添加して刺激し、産生されたEV回収を行った。 今後は以下に記載した推進方策のように研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
EVの標的細胞として、間質を形成するヒト線維芽細胞に膵がん細胞株から得られたEVを添加し、細胞の活性化を細胞形態・細胞走化性・遺伝子発現の変化により検討する。標的細胞が有意に活性化される条件を決定し、RNA-sequencingやリン酸化プロテインアレイを用いて標的細胞内の活性化経路を網羅的に解析し、膵がんEVが影響をおよぼす標的細胞の活性化経路を同定する。さらに、標的細胞の活性化経路とEVタンパク質成分との既存データベースを用いた相互解析により、標的細胞の活性化に寄与するEVタンパク質成分を複数選択する。なお、EVに封入されたmiRNAが標的細胞の活性化に関与する可能性も検討するため、EVからRNAを抽出し、miRNA-sequencingにより膵がん進行に関わるmiRNA成分を同定し、miRNAデータベースを用いて標的細胞の活性化経路に関与すると予測されるmiRNA成分を複数選択する。最後に、標的細胞を活性化するEV成分を特定するために、選択したEV成分を標的細胞に導入し、標的細胞の活性化を検討する。標的細胞の活性化がみられた成分に関しては、タンパク質阻害剤やanti-miRNAを同時に導入することで標的細胞の活性化が抑制できるかを検証する。 EV成分が治療標的になりうるかを検討するため、ヒト膵がんの病態に類似している膵がんマウスモデルを用いて、上記実験で特定できたEV成分に対する阻害剤を投与し、膵がんの病態進行が抑制できるかを検討する。さらに、CRISPR/Cas9によるノックアウトによりEVタンパク質成分を阻害したマウスでも膵がん進行が抑制できるかを検証する。
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Causes of Carryover |
当初、膵がん患者のEUS-FNA検体から細胞外小胞(EV)を抽出し、ヒトのがん関連線維芽細胞(CAF)などに添加して細胞形態や遺伝子発現の変化を見る予定でその予算を計上していたが、FNA検体から得られたEV数が極めて少なかったため、ヒト膵がん細胞株に刺激を加えてEVを抽出する方針に変更した。そのため、抽出されたEVをCAFなどに添加し反応をみる実験の予算は次年度に使用することになった。
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