2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K07998
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
加藤 孝宣 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (20333370)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | B型肝炎 / ペプトイド / 抗菌ペプチド / スクリーニング / 細胞培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫系の構成要素であり宿主の一次防衛を担う抗菌ペプチドは、細菌のみならずウイルスに対しても阻害活性を持つことが知られている。この抗菌ペプチドは強い生理活性を持つことから創薬の基盤分子として注目されてきたが、生体内ではプロテアーゼにより速やかに分解され、また膜透過性が低いため治療薬としての応用が難しい。そこで近年、抗菌ペプチドの問題点を克服するためにN置換グリシンオリゴマーを用いたペプチド模倣物、いわゆるペプトイドが開発された。このペプトイドはプロテアーゼ耐性で生体内でも安定であるため、抗菌ペプチドに代わる新たな創薬基盤として注目されている。そこで、本研究では様々な構造と側鎖を持ったペプトイドをスクリーニングし、HBVに阻害活性をもつペプトイドを同定し、その作用機序を検証することを目的とした。今年度は12種類のペプトイドのライブラリをスクリーニングし、抗HBV活性を持つペプトイドの同定を行なった。陽性コントロールとして、様々なウイルスに対する抗ウイルス活性が報告されている抗菌ペプチドであるLL37を用いた。簡便にHBVの感染能の評価が可能なHBVレポーターウイルスを産生するプラスミドを培養細胞に導入し、ペプトイドを含む培地で培養することによりHBVの産生能と感染に与える影響を解析した。その結果、抗HBV活性を持つ3種類のペプトイドが同定された。これらのペプトイドはHBs抗原量は低下させないが、産生されたHBVレポーターウイルスの感染力価を低下させることが分かった。今後、これらの抗HBV活性を持つペプトイドのHBVライフサイクルにおける作用点の解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は様々な構造と側鎖を持った12種類のペプトイドをスクリーニングし、抗HBV活性をもつペプトイドの同定を行なった。陰性コントロールとして抗ウイルス活性を持たないペプチドとして知られているC-terminal peptide fragment [15-34] of crotalicidin(Ctn)を用い、陽性コントロールとして様々なウイルスに対する抗ウイルス活性が報告されているLL37を用いた。HBVレポーターウイルスを産生するプラスミドを導入した培養細胞にこれらのペプトイドもしくはペプチドを加え7日間培養した。その後、得られたウイルスの感染力価を評価したところ、コントロールとして加えたCtnペプチドでの処理と比較して感染力価を50%以下にまで低下させるペプトイドが3種類同定された。陽性コントロールとして用いたLL37の処理では、感染力価が60%程度まで低下していた。また、これらのペプトイドもしくはペプチドの処理では培養上清中のHBs抗原量ほとんど低下しなかった。これらの結果から、今回スクリーニングを行なった12種類のペプトイドの中で同定された抗HBV活性をペプトイドは、HBVの感染性ウイルス粒子をターゲットにして作用している可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討によりHBVの感染力価を低下させる3種類のペプトイドが同定された。今後は異なるHBV遺伝子型株でもその抗ウイルス活性が維持できるかを確認するため、培養細胞由来のHBV(遺伝子型D株)の感染系を用いて評価を行う。また、これらのペプトイドはHBs抗原に影響を与えず感染力価のみを低下させていたため、LL37などの抗菌ペプチドと同様に感染性ウイルス粒子のエンベロープをターゲットにしている可能性が考えられる。そこで、培養細胞でのHBV感染増殖系を用いて、抗菌ペプトイドによる抗HBV活性の作用点の解析を行う。培養細胞への感染前のみ、もしくは感染後のみに抗菌ペプトイド処理を行うことにより、肝細胞を介した、もしくは肝細胞中での抗菌ペプチドの抗HBV活性の評価が可能となる。さらに抗菌ペプトイドのHBV粒子への直接作用も評価する。HBV粒子を抗菌ペプトイドで処理した後に密度勾配超遠心法で分離し、得られたフラクション中のHBs抗原量やコア関連抗原量、感染力価を測定することにより、ウイルス粒子への直接的な影響を評価する。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが、令和5年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和4年度分についてはほぼ使用済みである。
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