2022 Fiscal Year Research-status Report
低リスク患者の食道扁平上皮癌の発がん分子機序の解明
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22K08003
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
後藤 裕樹 山形大学, 医学部, 医員 (50912119)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞老化 / SASP / 食道扁平上皮癌 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
日本を含むアジア諸国では食道癌の80%以上は扁平上皮癌(ESCC)で腺癌が主体の欧米と異なる。男性や喫煙、飲酒、特にアルコール代謝に関連する酵素の遺伝子多型(ALDH2やADH1B)が、ESCCのリスク因子として知られている。しかし、飲酒や喫煙歴のない女性でもESCCの発症は一定の割合でみられる。我々は表在型ESCCの遺伝子解析を行い、低リスクとされる女性の表在型ESCC患者の非癌部上皮でCDKN2A遺伝子バリアント頻度が高いことを報告した。ESCCには高リスクとされる男性や飲酒、喫煙に影響される経路以外に発癌に至る新しい経路が潜在する可能性が示唆される。しかし、これまでのESCCの遺伝子変化の解析の主体は男性の飲酒喫煙者で、この女性の低リスクESCCの発癌機序は不明である。本研究では、低リスクの女性の表在型ESCCに焦点をあて、CDKN2A遺伝子を軸とした遺伝子変化、エストロゲンや細胞老化との関連性を明らかにし、この機序の制御が新しい治療標的となりえるかを明らかにすることを目的とする。 2022年度は、内視鏡的食道粘膜下層剥離術にて切除した表在型ESCC組織を用いて細胞老化とその関連性分泌因子(p21とIL-6)の蛋白発現を、免疫染色を用いて検討し、CDKN2A遺伝子バリアントとの関連性を検証した。p21の蛋白発現が特に非飲酒、非喫煙の女性の非癌部で高い傾向があることが明らかとなった。次に早期ESCC組織を傍基底層領域とその上層に顕微鏡下で正確に切り分け、それぞれの組織からRNAを抽出し、RNAシークエンス解析を行った。この網羅的な発現データを、背景のリスク因子(飲酒や喫煙、性差)に分けて比較し、非癌部や癌部の傍基底層領域やその上層での細胞老化やその関連因子をはじめとした特徴的なmRNA発現変化の同定を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
切除標本から十分な質と量のRNAを抽出するための条件検討に時間を要したが、それ以外は当初の予定どおり順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
非喫煙・飲酒の女性の非癌部や癌部での特徴的なmRNA発現変化を同定する。その結果をみて、発現変化のあるものについて機能解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
前年度の予算については概ね予算の通りに使用した。次年度は差額分もあわせて、同定したmRNA発現変化の機能解析のため使用する見込みである。
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