2023 Fiscal Year Research-status Report
胆汁酸を起点とした肝筋連関の解明と肝性サルコペニアの診断・治療
Project/Area Number |
22K08011
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岩佐 元雄 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (80378299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 勇人 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00555609)
江口 暁子 三重大学, 医学系研究科, 特任准教授(研究担当) (00598980)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サルコペニア / リトコール酸 / 分岐鎖アミノ酸 / 肝硬変 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニアを併発した慢性肝疾患の予後は不良である。筋量の維持に分岐鎖アミノ酸(BCAA)が使用されているが、さらなる治療法の開発が求められている。そこで、肝性サルコペニアと胆汁酸成分、特にリトコール酸(LCA)を含むG-protein-coupled receptor 5(TGR5)リガンドに着目した検討を行った。 四塩化炭素を10週間投与して作製した肝硬変(LC)ラットにBCAAを6週間投与した。腓腹筋量/全体重の比はBCAA投与により有意に増加し(p<0.05)、腓腹筋で上昇したMafBx(muscle atrophy F-box protein)等のタンパク質分解関連遺伝子は、BCAA投与により有意に低下し(p<0.05)、LCA/全胆汁酸比はBCAA投与により有意に改善していた(p<0.05)。 LC患者113例の胆汁酸成分を測定し、腸腰筋指数 (PMI)との相関や生存率を解析した。LC患者において、PMI値は血清LCA値(p<0.01)やLCA/全胆汁酸比(p<0.05)と有意に相関し、LCA を含むTGR5リガンドは、PMIの低いLC患者で有意に低下した(p<0.05)。観察期間1005±471日の間に23例が死亡し、LCA低値群(<0.32μmol/L: AUC0.649)の予後は不良であった(p<0.01)。 LCAが骨格筋量と相関する分子機構を解明するため、マウス骨格筋細胞株(C2C12)にLCAを添加したところ、濃度依存的に細胞肥大が観察された。また、TGR5やIGF-1遺伝子発現はLCA添加により有意に増加し、LCA+TGR5 antagonist添加により減少した(p<0.01)。TGR5 agonistをC2C12に投与すると、細胞肥大やTGR5・IGF-1遺伝子の有意な上昇(p<0.01)、Akt の活性化(p<0.01)が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近年二次胆汁酸の生理作用が明らかになっているが、今回、ラット及びヒト血清を用いた研究を通して、長寿との関連が示唆されているリトコール酸(LCA)値が肝硬変ラットやヒトの骨格筋量と相関し、予後予測にも使用できることを見出した。さらに、マウス骨格筋細胞株(C2C12)にLCAやG-protein-coupled receptor 5 (TGR5) antagonist・agonistを添加し、TGR5-Insulin-like Growth Factor-1 (IGF-1)-Akt経路を活性化することで骨格筋細胞肥大を惹起することを発見した。このように当初計画していた四塩化炭素誘導肝硬変(LC)ラットを用いた実験、LC患者を対象とした研究、C2C12を用いたin vitroの実験は概ね終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
四塩化炭素誘導肝硬変(LC)ラットを用いてリトコール酸(LCA)の減少が腓腹筋分解と関連すること、LC患者を対象としてLCAと腸腰筋面積と関係し、予後を規定すること、マウス骨格筋細胞株(C2C12)を用いてLCAはTGR5-Insulin-like Growth Factor-1 (IGF-1)-Akt経路を活性化することで骨格筋細胞肥大を惹起することを見出した。今後は英語論文に必要な図や表を作成して細部を詳細に検討するとともに、必要な実験を追加していく。
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Causes of Carryover |
四塩化炭素誘導肝硬変(LC)ラットを用いてリトコール酸(LCA)の減少が腓腹筋分解と関連すること、LC患者を対象としてLCAと腸腰筋面積と関係し、予後を規定すること、マウス骨格筋細胞株(C2C12)を用いてLCAはTGR5-Insulin-like Growth Factor-1 (IGF-1)-Akt経路を活性化することで骨格筋細胞肥大を惹起することを見出した。これらラットおよび細胞株を用いた実験に使用した予算が当初の計画より少なく済んだため、ラット腓腹筋での遺伝子発現の項目追加、in vitro実験の再現性確認やLCAの濃度を変更した実験に使用する予定である。
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