2023 Fiscal Year Research-status Report
慢性肝疾患で産生される自己抗体が血小板減少を誘導する機序の解明
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22K08017
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 隆司 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90407114)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性肝疾患 / 血小板減少 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性肝疾患における血小板減少の病因を解明するために、抗血小板抗体を含めた自己抗体が血小板減少に与える影響について検討した。今年度は、二次元免疫ブロット法により血小板減少を伴う慢性肝疾患患者で産生される自己抗体の網羅的な検索を行なった。また、アルコール性肝炎の患者に注目して、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数の測定およびB細胞を活性化するサイトカインであるBAFFの血漿濃度の測定を行なった。 二次元免疫ブロット法を用いて、血小板減少を伴う慢性肝疾患患者で産生される自己抗体の網羅的な検索を行なった結果、149個の抗原タンパク質が見出された。そのうち、Lamin-B1、Leucine-rich PPR motif-containing protein、T-complex protein 1 subunit theta、ATPase GET3、Prohibitinは、信号強度の比較等より血小板減少に伴う慢性肝疾患に関連する自己抗体が認識する抗原タンパク質である可能性が考えられた。 ELISPOT法を用いて、アルコール性肝炎患者の抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数を測定した結果、血小板減少を伴う患者では抗体産生B細胞が有意に多いことが明らかとなった (p=0.006)。一方、ELISAを用いて同様の検体のB細胞活性化因子 (BAFF) の血漿濃度を測定したところ、血小板減少の有無の比較では有意な差は見られなかった (P=0.18)。以上より、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数の測定はアルコール性肝炎に伴う自己免疫が関与する血小板減少の検査法として有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の解析で、重度の血小板減少を伴う肝硬変患者において、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数が多く、血漿BAFF濃度が高値であることが示された。 それらの結果をもとに令和5年度ではアルコール性肝炎患者を対象に解析を進めた。血小板減少を伴うアルコール性肝炎患者では血小板正常のアルコール性肝炎患者と比べ、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数が有意に高値であることを明らかにした。ただし、血漿BAFF濃度は血小板減少の有無による違いで、差は認められなかったため、他の要因が血小板減少や抗血小板抗体産生に関与している可能性が考えられた。 また血小板減少と関連する新規自己抗体を検索を実施し、可能性がある抗原タンパク質を同定した。 上記の理由から、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
血小板減少を伴うアルコール性肝炎患者では、抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数が多く認められた。 今後は治療前後での抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数の変化、その他の血小板減少と関連する自己抗体の変化を検討する予定である。 また、血小板減少と関連する新規自己抗体の検索で、可能性がある抗原タンパク質が同定されたため、それらをELISA、ウエスタンブロット法等で検索を試みる。
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Causes of Carryover |
本研究を行うため、2022年度以前に他の競争的研究費で消耗品等を購入し、実験を進めていた。2023年度では、以前購入していた消耗品を使用して研究を進められたため、購入すべき消耗品が少なく、次年度使用額が発生してしまった。 現在、購入していた消耗品も減っており、追加購入する予定である。 また、本研究での成果があり、現在、まとめており、論文作成を実施している。その際の英文校正、論文投稿費に助成金を使用する予定である。
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