2022 Fiscal Year Research-status Report
オルガノイド培養系を用いた膵充実性偽乳頭腫瘍の成立・悪性化機序の解明
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22K08029
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小林 正典 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10825459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 剛 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (20733900)
田邉 稔 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50197513)
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50451935)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵充実性偽乳頭腫瘍 / オルガノイド / 網羅的遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵solid pseudopapillary neoplasm(SPN)は若年女性に好発する原因不明の悪性腫瘍で病理学的には偽乳頭構造が特徴とされる.低悪性度だが浸潤や転移を来すと有効な薬物療法はなく治療に難渋する.SPNの発生機序や悪性度を規定する因子は不明で,新規治療の開発には同解析が急務である.「オルガノイド培養技術」は腫瘍細胞のみを用いた純度の高い解析が可能となる.今回,われわれの研究として膵SPNの悪性化リスクの層別化と有効な治療薬の開発を目的に,当院で2019年12月から2021年4月までに切除された6例のSPN症例から年齢,性別,腫瘍径,病理診断による悪性所見の有無を抽出し,さらに腫瘍部,正常部の組織からそれぞれオルガノイドを作成した.さらにこれらを用いてキール大学と共同でRNA-seq法による遺伝子発現の網羅的な解析を行った.また,臨床所見・分子生物学的特徴について解析を行った.現在までに集積された対象の年齢中央値は41歳(IQR 38-49歳),男女比は1:7であり,腫瘍径中央値は34mm(IQR 18-101mm )であった.神経叢もしくは静脈浸潤を認めた症例は3例で内1例に肝転移を認めた.悪性所見を有するSPNでは有意に核径の増大を認めた(平均値5.8μm vs 8.1μm, p<0.001). 正常・腫瘍部位の手術組織と同組織から作成した正常・腫瘍オルガノイドを用いてRNA-Seqを行い, 腫瘍由来手術組織・腫瘍由来オルガノイドで共通して発現変動を認める32遺伝子が同定され,SPNを特徴づける遺伝子発現様式が明らかとなった.これらの解析をさらに発展させ,次年度にはSPN成立・進展を規定する分子生物学的機序を解明することを予定しており,さらにSPNに対する新規治療の開発につなげることを目標としている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
稀少疾患のため症例集積の困難も予想されたが,当初の予定通り年間3例程度の症例の集積が可能で,オルガノイドの樹立とその解析も予定通り進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は患者由来膵オルガノイドおよび手術検体を用いたSingle-cell RNA-seqを用いた個々の細胞を対象としたノイズの少ない詳細な遺伝子解析を行うことで,本年度の解析結果の解像度を上昇させ,そこから明らかとなるSPNを特徴づける遺伝子群に対して細胞生理学的な機能解析を予定している.これらの解析結果からSPN成立・進展を規定する分子生物学的機序を解明すること,さらにSPNに対する新規治療の開発につなげることを目標とする.
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響で物品が届かないなどのため予想より消耗品の購入が制限された。また本年度は海外への検体輸送などが制限され,そのための予算に差額が生じた。来年度は当初の計画に則り採取された検体の海外での解析を行う、今年度物品の納入の遅れにより制限された細胞生理学検討をより詳細に実行する予定である.
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