2023 Fiscal Year Research-status Report
精密がん患者モデルを用いた膵癌新規がん免疫療法の開発
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22K08035
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
加藤 真吾 横浜市立大学, 附属病院, 講師 (20622583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 章浩 横浜市立大学, 医学研究科, 客員講師 (80869222)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵癌 / オルガノイド / がん動物モデル / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、がんゲノム変異に最適化した膵癌の新規がん免疫療法を開発することである。①腫瘍浸潤免疫細胞の詳細な解析、②がん免疫療法の標的として適切なシグナル経路の同定、③当該シグナル経路を標的とした治療の効果検証という流れで研究を計画している。令和4年度は、膵癌の中で最も多いがんゲノム変異であるKRAS変異+TP53変異(K53膵癌)と、TP53野生型膵癌の中で最も頻度が高いKRAS変異+SMAD4変異(KS4膵癌)を用いて解析を進めた。それぞれの膵癌の腫瘍局所で優位に作用している免疫調節細胞を解析した結果、骨髄由来抑制細胞(MDSC)のサブセットの一種がK53膵癌で優位に増加していた。令和5年度は、がん免疫療法の標的として適切なシグナル経路の探索を行うために、K53膵癌とKS4膵癌の網羅的遺伝子発現解析をRNA sequenceにより行った。2種のがんで発現量の異なる遺伝子は多数検出されたが、シグナル解析に落とし込むと、細胞接着や代謝経路に関わるものが多く、免疫細胞との相互作用を検討できる経路は同定されてなかった。そこで、KRAS変異のみを導入した膵管上皮オルガノイド(K膵管)を解析対象に加えた。K膵管は、膵癌の前がん病変として知られる膵上皮内腫瘍性病変(pancreatic intraepithelial neoplasia:PanIN)を想定したオルガノイドである。K53膵癌とK膵管でRNA sequenceにより網羅的遺伝子発現解析を行い、癌と前がん病変での発現変動遺伝子を比較した。ここでも、多くの発現変動遺伝子は検出されたが、シグナル経路解析では、特徴的なものを認めなかった。そこで、それぞれの2群間で発現変動の大きいサイトカイン・ケモカインに着目し、以後の解析を進める方針とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度の進捗として、2種の膵癌を用いた、免疫エフェクター細胞の解析と免疫調節細胞の解析に関しては基礎的なデータの取得までは完了した。研究計画書の予定に関しては令和4年度内に完了したため、概ね順調に進歩していると判断した。 令和5年度の進捗として、K53膵癌とKS4膵癌および、K53膵癌とK膵管の網羅的遺伝子発現解析をRNA sequenceにより行った。結果として、シグナル伝達経路としては以後の解析に有用な所見は現在のところ得られていない。複数の遺伝子群に着目するよりも、それぞれの2群間で発現変動の大きいサイトカイン・ケモカインに着目し、以後の解析を進める方針とした。計画書に記載したセクレトーム解析までは令和5年度中に終わらなかったので、やや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年始めに、セクレトーム解析に着手しており、遅れを取り戻そうと努力している。 令和6年度は動物実験が主な計画であるが、動物実験を行う以上、確かな根拠が必要となるので、慎重に吟味した後、実験に進みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は、データ解析が多かったため、予想よりも使用金額を節約できた。次年度は動物実験が主となるため、今年度に比較して多くの新規物品の購入が必要となる。次年度分として請求した助成金と合わせた範囲で適切に使用する。
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