2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K08075
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 明子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (60402385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 洋 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (90303651)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | GLP-1 / 膵外分泌 / 単離小葉間膵管 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)目的;慢性膵炎、嚢胞性線維症、膵切除後の膵内外分泌不全では消化吸収不良による慢性的な栄養不良があり、健康寿命と生命予後の改善には低栄養から脱却することが最重要である。GLP-1(glucagon-like peptide-1)は膵島β細胞上のGLP-1受容体に結合しグルコース濃度依存性に血糖上昇時にのみインスリン分泌を促進することがわかっているが、膵外分泌作用については明らかにされていない。本研究は、GLP-1がこのインクレチン作用に加えて、膵導管細胞に作用し溶液分泌(HCO3-・水分泌)促進作用をもつことおよびGIPやglucagonなどについてもその溶液分泌(HCO3-・水分泌)分泌促進作用について同様に検討した。 (2)方法;モルモットの膵臓を摘出し、collagenaseで処理し、実体顕微鏡下で鋭利な針を用いて、直径約100 μm、長さ約500μmの小葉間膵管を単離した。数時間培養し、両端が閉じて内腔に分泌液が貯留した単離小葉間膵管を、倒立顕微鏡のステージ上で、Cell-Takを用いてカバーガラスに固定し、37℃の重炭酸緩衝液で表層灌流した。1分ごとに明視野像を取得し、管腔内溶液の変化から溶液分泌(HCO3-・水分泌)速度を求め、膵管上皮の単位表面積あたりで表した。 (3) 結果;重炭酸緩衝液で表層灌流すると0.48±0. 01 nl/min/mm2;(mean±SE)の基礎分泌を認め、表層灌流液にGLP-1(1nM)を加えると溶液(HCO3-・水分泌)分泌速度は、1.43±0.04 nl/min/mm2;(mean±SE,n=4)となり、約3倍増加した。 同様に表層灌流液にGIP-1(1nM)を加えると分泌速度は基礎分泌に比べ約2.5倍増加し、glucagon(1nM)を加えると約1.2倍増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単離膵管を重炭酸緩衝液で表層還流すると基礎分泌0.48±0. 01 nl/min/mm2;(mean±SE)を認め、ここにさらにGLP-1(1nM)を投与すると溶液分泌速度は約3倍(mean: 1.44 nl/min/mm2)に増加、GIP(1nM)を投与すると約2.5倍(mean:1.22 nl/min/mm2)に増加、glucagon(1nM)を加えると約1.2倍(mean:1.10 nl/min/mm2)に溶液分泌速度は増加した。 GLP-1、GIP、glucagonのそれぞれが単離小葉間膵管の溶液分泌(HCO3-・水分泌)を促進することがわかったため、現在、GLP-1(空腹時血漿濃度2-20 pmol/L)、GIP(空腹時血漿濃度2-20 pmol/L)、glucagon(空腹時血漿濃度8.5-15pmol/L)のそれぞれを1pMから10nMまで濃度を変化させて、濃度反応曲線を作成する実験を行っており、研究は順調に遂行できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.GLP-1、GIP、glucagonの単離小葉間膵管の溶液分泌(HCO3-・水分泌)への影響(濃度反応曲線):表層灌流液にGLP-1(1nM)、GIP(1nM)、glucagon(1nM)を加えると単離小葉間膵管からの溶液分泌(HCO3-・水分泌)速度が増加する(p<0.01)ことがわかった。さらに、モルモット単離小葉間膵管の溶液分泌(HCO3-・水分泌)に対して、GLP-1、GIP、glucagonそれぞれに対して濃度反応曲線を作成する。 2.GLP-1、GIP、glucagonのそれぞれと消化管ホルモンであるsecretinとの単離小葉間膵管の溶液分泌(HCO3-・水分泌)に対する相互影響の検討:モルモット単離小葉間膵管をsecretin存在下に重炭酸緩衝液で表層灌流し、ここにGLP-1、GIP、glucagonのそれぞれを加え、溶液分泌(HCO3-・水分泌)に対するsecretinとの相互影響を検討する。 3.モルモット単離小葉間膵管でのGLP-1、GIP、glucagonレセプターの同定:モルモットの全膵および単離小葉間膵管におけるGLP-1、GIP、glucagonの同定をRT-PCR法を用いて検討し、タンパクの発現も検討する。モルモット全膵及び膵導管細胞のGLP-1、GIP、glucagonレセプターの発現・局在を免疫組織化学的に検討する 4.GLP-1、GIP、glucagonの細胞内pH(BCECF使用)に与える影響の検討:HCO3-/H+輸送体の活性評価 5.GLP-1、GIP、glucagonの細胞内Ca2+(Fura-2使用)に与える影響の検討:Ca2+輸送体(Ca2+チャネル、Na+-Ca2+交換輸送体)の活性評価
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Causes of Carryover |
実験計画を変更し、今年度実施する予定であったRT-PCR法を用いてのモルモット単離小葉間膵管でのGLP-1、GIP、glucagonレセプターの同定やタンパクの発現の検討、また、マイクロキャピラリーを用いての単離小葉間膵管のマイクロパ-フュージョンなど試薬や実験器具に経費がかかる実験を翌年度以降に変更したため、次年度使用額が生じた。 使用計画は、次年度に、モルモット単離小葉間膵管でのGLP-1、GIP、glucagonレセプターの同定やタンパクの発現を検討する試薬の購入やGLP-1、GIP、glucagonの細胞内pH(BCECF使用)や細胞内Ca2+(Fura-2使用)に与える影響に与える影響の検討で行う単離小葉間膵管の管腔内をマイクロパ-フュージョン(管腔への microperfusion により basolateral/apical membrane を別々に評価する実験)を行うためのマイクロキャピラリーなどを含む高額な消耗品である実験器具や蛍光色素などを含む試薬などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Presentation] Effects of incretinGLP-1, GIP, and glucagon on fluidpancreatic secretion in guinea-pig interlobular pancreatic duct2022
Author(s)
M. Higuchi, A. Yamamoto, I. Taniguchi, N. Nomura, E.Niwa, M.Nakakuki, M.Yamaguchi, L. Liu, H. Ishiguro
Organizer
第26回国際膵臓学会/第53回日本膵臓学会大会
Int'l Joint Research