2023 Fiscal Year Research-status Report
青黛による芳香族炭化水素受容体の活性化を用いた慢性膵疾患の治療法の開発
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22K08090
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
鎌田 研 近畿大学, 医学部, 講師 (70548495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 智裕 近畿大学, 医学部, 准教授 (40444468)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自己免疫性膵炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族炭化水素受容体(AhR)は、生体内のほぼ全ての細胞に存在するタンパク質である。AhRの活性化は発がん・代謝・免疫に様々な影響を及ぼす。本研究では、 自己免疫疾患モデル動物であるMRL/MpJマウスに対して、Poly(I:C)を繰り 返し腹腔内投与することにより、自己免疫性膵炎を誘導した。最初に、3種類のAhR活性化分子(2, 3, 7, 8-Tetrachlorodibenzodioxin、Indole-3-pyruvic acid、植物由来生薬である青黛)の投与が、実験的自己免疫性膵炎の発症にどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果、これらのAhR活性化物質の投与が効 率的に自己免疫性膵炎の発症を防ぐことが膵組織の病理像の検討にて判明した。次いで、AhRの活性化に伴い、膵臓ランゲルハンス島α細胞においてIL-22が著明 に産生されること、抗IL-22中和抗体投与下ではAhR活性化分子による膵炎発症抑制効果が消失することが分かった。このように、AhR活性化分子による膵炎発症 抑制効果がIL-22に依存的であることが示唆された。また、自己免疫性膵炎患者において、ステロイド治療による寛解後に血清IL-22が著明に増加することが確認 された。自己免疫性膵炎の進行は、腺房組織の消失と腺房-導管異形成 (ADM)を特徴とし、SOX9+細胞あるいはAMY-CK+細胞の出現にて定義されるが、AhR活性化分子の投与がADMの発生を抑制することが免疫染色による検討にて判明し た。昨年、研究成果を英国免疫学会雑誌に発表した (Clinical and Experimental Immunology 2023;212:171-183)。最近では生薬青黛が潰瘍性大腸炎を合併する2型自己免疫性膵炎の治療法として有効であった症例を経験し、その成果をPancreatology誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な研究目標である、AhRからみた自己免疫性膵炎の発症・治療メカニズムについては概ね解明され、それらの成果を英国免疫学会雑誌に発表した。さらに、基礎研究の成果を基に特定臨床研究「自己免疫性膵炎患者に対する青黛を用いた治療法の安全性確認試験」の開始に至っている。 自己免疫性膵炎患者に対して青黛(商品名:青黛腸溶 FC 錠)を投与し、症状や膵炎の状態を評価することにより、自己免疫性膵炎に対する青黛の安全性・有効性について明らかにす ることを主目的とする試験である。同試験についても概ね順調に進行しており、研究期間内に目標登録症例数10例に達することが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
特定臨床研究「自己免疫性膵炎患者に対する青黛を用いた治療法の安全性確認試験」では目標症例数に達した後、以下の評価を行う。当該試験薬の安全性の評価、青黛投与開始 2 週時点における緩解率、青黛投与開始 8 週時点における緩解率、青黛投与開始 24 週時点における緩解率、生体内における AhR-IL-22 経路の活性化と疾患活動性の評価。対象患者より、治療前後のタイミングで検体(便及び血液)を採取しており、生体内における AhR-IL-22 経路の活性化と疾患活動性の評価を行うことを予定している。患者登録の進捗が遅れることが予想された場合は、適宜患者選択基準を変更するなど、実施計画書の改訂を含め患者リクルートに努める。
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