2023 Fiscal Year Research-status Report
深部心筋に安定焼灼傷を形成する高周波通電法構築(抵抗伝導加熱と灌流冷却の適正化)
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22K08096
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
池主 雅臣 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40303151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 修 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40752457)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高周波アブレーション / 不整脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥大心筋から生じる不整脈を安全に焼灼して、術後再発を最小とする高周波通電法の構築を進めている。冠動脈灌流によって拍動収縮する食用豚の肥大心筋を用いて、心筋貫壁性興奮指標(ペーシング閾値、局所電位高、伝導能)・高周波通電電気指標(電流・電圧・インピーダンス)・心筋内温度をモニターしながら高周波通電ができるオリジナル実験系を用いている。2023年度はイリゲーションカテーテルで形成される焼灼巣の安定性を検証した。高周波焼灼巣の周辺は伝導加熱で形成されるため、治療後に興奮性を再獲得する可能性がある。短時間通電と標準時間通電を比較すると、再興奮する心筋範囲は共に1㎜程度であるが、標準時間通電で広い傾向にあった。これは伝導加熱焼灼される心筋範囲が両者で異なる事を示した結果と解された。 心筋は一定時間50℃以上に加熱されると安定した焼灼巣に至るため、通電後の余熱も安定焼灼傷形成に関与する可能性がある(Thermal Latency)。肥大心筋に双極通電を行うと、通電直後の心筋中心部温度は70-90℃に至り、その後は数分の経過で37℃に復することから、通電後も一定時間は心筋焼灼が進行することが示された。また心筋温度が復する過程は、インピーダンスが再上昇する過程と良好に指数相関した。 高周波治療の重篤合併症にスチームポップがある。多様性ある通電モードに単一のスチームポップ予測指標を用いる事が適切であるか検証した。標準単極通電法、半濃度生食灌流法、双極通電法でスチームポップ発症過程を比較したところ、いずれも総インピーダンス低下を20オーム程度に留める事が安全施行に重要であることが確認された。これらの研究結果は専門誌と関連学会に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね予定通りに研究を進めており、得られた成果は専門誌(J Cardiovasc Electrophysiol 2023, Indian Pacing Electrophysiol J 2024)と2023年7月の日本不整脈学会総会、2023年11月日本不整脈学会秋季大会、2024年3月の日本循環器学会総会で発表した。現在はさらなるデータ蓄積と分析を行うとともに予定したプロトコール遂行を加速させ、深部心筋に安定した焼灼巣を形成する高周波通電モードの構築に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
独自に開発した(冠動脈灌流拍動心筋実験系)を用いて、臨床治療と同様の心筋電気生理情報を取得しながら、深部心筋に安定した焼灼巣を形成する高周波通電モードを構築する研究を推進する。焼灼巣の色調変化をイメージソフトで定量的に評価して、再発に関与する不安定焼灼巣を安定焼灼巣から判別するプロトコールを推進する。不安定焼灼巣の分布が各通電モードで如何に異なるか検証する。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度は焼灼巣イメージング解析を行う実験系の整備導入に時間を要し、本格的なプロトコールの開始が出来なかった。また研究チームに長期療養を要するメンバーが出たために、一部のプロトコールの持ち越しを余儀なくされた。結果として実験回数は当初予定の70%程度に留まった。このため計上していた実験関連消耗品経費、高周波通電関連機材経費、研究成果発表関連経費を使用しなかった。 (使用計画) 本年度は、焼灼巣イメージング解析の準備が整い、研究チームメンバーの役割調整を行った。研究課題を遂行する実験プロトコールを加速させるため、2023年度未使用経費を2024年度の経費に充当する。
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