2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K08127
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野出 孝一 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敦史 佐賀大学, 医学部, 特任教授 (00594970)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 血管不全 / 先進的予防医療 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管不全(Vascular Failure)は、2006年に研究代表者らが初めて提唱した包括的な血管障害を指す病態概念である。循環器病を始めとする多領域の疾患における発病および進展は、血管の構造や機能における種々の異常(=血管不全)と密接に関連している。そのため、未病段階を含む早期の段階から血管の機能や構造を適切に評価することは、血管不全の早期診断や進展予防を通じて、種々の疾患に対する先制的予防医療を実践する上で非常に重要な鍵となる。研究代表者らは、2018年に生理学的検査手法に基づいた血管不全の診断指針を策定した。本申請研究では、血管に対して異なる側面からのアプローチを通じたより包括的な血管不全の診断を可能にするため、網羅的な文献レビューおよびプロテオミクス技術などを駆使して血管不全の生化学的特徴を解明し、臨床的汎用性をもつ簡便かつ高精度な生化学的指標に基づいた血管不全の診断指針を策定する。 血管は全身臓器組織への血液灌流を調整し、その恒常性を維持する人体最大の’臓器’である。「ヒトは血管とともに老いる」と端的に表現される加齢変化に加えて、様々な後天的・外的要因により動脈硬化を基盤とする血管障害が進行する。特に、この動脈硬化を惹起する代表的な因子として、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などが挙げられるが、それらの病態の背景には多彩な要因に起因する代謝内分泌的・生化学的な異常が中心となり、それらが相互に連関し蓄積した結果、動脈硬化という一表現型として臨床現場で評価されているに過ぎない。そのため、動脈硬化を始めとする血管障害を包括的に評価するには、その最終的な表現型のみならず、その背景にある種々のサブクリニカルな要因や病態も併せて評価する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究を実施するにあたり、研究代表者及び分担者らが中心となり、関連する研究協力者にも適宜参画を募り、研究班の構成を行った。 初年度においては、2018年に生理学的診断指針を作成した時の経験則を基に、網羅的な文献レビューに基づきこれまでの関連するエビデンスを集約・統合的解釈を実施した。その上で、血管不全の病態と関連が強い生化学的特徴を解明し、その特徴を生化学的分類に基づくクラスタリングにより情報を整理した。 2006年に研究代表者らが提唱した血管不全(Vascular Failure)は、血管内皮機能障害・血管平滑筋機能障害・血管代謝機能障害を主な構成概念とする包括的な血管障害を指す病態概念である(Inoue and Node. J Hypertens. 2006)。この血管不全の概念に基づき、未病段階を含む早期の段階から血管の機能や構造を適切に評価することは、血管不全の早期診断や進展予防を通じて、種々の疾患に対する先制的予防医療を実践する上で非常に重要な鍵となる。研究代表者らは、2018年に生理学的検査手法に基づいた血管不全の生理学的診断指針を策定したが(Tanaka, Node, et al. Hypertension. 2018)、包括的概念である血管不全に対して次なる側面に着目した診断指針の策定が喫緊の課題であった。そこで本申請研究は、血管不全における血管代謝機能障害を中心とした生化学的特徴を解明し、その特徴に基づいた生化学的診断指針の策定を目的とする。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目(~3年目)においては、初年度に得られたデータを元に、臨床現場で血管不全を診断するための生化学的指標を特定し、その指標を用いた診断指針を策定し、学術誌へ公表する。また、2年目後半から、日本血管不全学会の関連施設を中心に、両検査指標を実施した循環器疾患や代謝異常疾患症例等を対象とした前向き登録研究を立案し、3年目に症例登録を実施する。最終年度は、前向き登録研究で得られたデータを解析し、既存の生理学的指標と策定された生化学的指標との関連性・妥当性を検証し、診断指針の改良を図ると同時に、一般臨床への普及へ向けた広報活動も併せて実施する。
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Causes of Carryover |
消耗品費として使用を計画していたが、当該年度に購入の必要がなくなったため、繰り越し金が生じた。次年度に購入予定とする。
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Research Products
(2 results)