2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K08149
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村越 伸行 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80447218)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心不全 / タンパク質翻訳開始因子 / EIF4EBP3 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
1. マウス心不全モデルにおけるタンパク翻訳調節因子EIF4EBP3の役割の解明 CRISPR/Cas9で作成したEIF4EBP3遺伝子欠損マウス(KO)は同腹の野生型マウス(WT)と比較し、心エコーにおける心機能・心形態、病理学的解析における心筋サイズ・間質線維化の程度において、有意差を認めなかった。大動脈弓部縮窄(TAC)による圧負荷心不全モデルにおいて、WTと比較し、KOではTAC手術後の心機能悪化が抑制され、生存率が改善した。病理学的にはKOでは心室の線維化が抑制されており、またKOではミトコンドリア障害が抑制されていた。RNA sequencing解析では、WT-TAC群と比較して、KO-TAC群では脂肪酸エネルギー代謝に関わる遺伝子発現が維持された一方、線維化に関わる遺伝子発現は抑制されていた。また、心筋梗塞(MI)モデルにおいても、TACによる心不全と同様の所見が認められた。以上より、圧負荷あるいは虚血いずれの病因による心不全においても、EIF4EBP3欠損がミトコンドリア機能を維持し、心保護的に作用することが示唆された。 2. 培養心筋細胞を用いたEIF4-EIF4EBP3経路による分子機序の解明 野生型(WT)あるいはEIF4EBP3遺伝子欠損(KO)マウスから採取した心筋細胞におけるエネルギー代謝を細胞外フラックスアナライザーを用いて測定したところ、WT由来心筋細胞と比較して、KO由来心筋細胞では好気的エネルギー代謝が維持されていた。一方、EIF4EBP3 cDNA強制発現心筋細胞では好気的エネルギー代謝が低下した。EIF4EBP3欠損においてミトコンドリア機能を維持する機序として、EIF4EBP3が代謝に関連する転写因子と相互作用し、ミトコンドリア関連遺伝子の発現を亢進させていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はほぼ計画通り順調に進んでおり、マウス心不全モデルの解析は概ね完了している。心筋細胞を用いた実験で、不全心筋におけるEIF4EBP3のエネルギー代謝に対する役割を明らかにし、相互作用を示す分子に関してもデータが得られている。検証実験を行いつつ、論文投稿の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
EIF4EBP3とタンパク相互作用を示す分子に関して細胞を用いた実験を進める。標的とする転写因子の強制発現あるいはノックダウンによる下流の遺伝子発現とミトコンドリア代謝の変化を検証する。年度内にデータをまとめ、論文を完成させ投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進行および経費の使用状況についてはほぼ予定通りであるが、委託解析費などその他の項目に関わる費用が想定より少なかった一方、試薬・消耗品の費用は想定よりやや多く、結果として33,839円の次年度使用額が生じた。今年度は試薬・消耗品・事務用品などの物品費として80 万円、委託解析費などその他の経費として20万円を計上しており、繰り越した経費も物品費として使用する予定である。
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