2022 Fiscal Year Research-status Report
Hematopoietic Y chromosome genes and its association to heart failure progression
Project/Area Number |
22K08162
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐野 宗一 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (80647884)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Loss of Y chromosome / Y染色体遺伝子 / CRISPR/Cas9 / 造血幹細胞 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの研究は、後天的Y染色体モザイク(mosaic loss of Y chromosome: mLOY)と心不全との関連について解明することを目指している。mLOYは男性の血液細胞でY染色体が喪失する現象で、これが心臓マクロファージの過剰な線維化反応を引き起こし、心不全の進行を促進することが以前の研究で明らかになった。本研究計画では、心臓マクロファージにおけるY染色体遺伝子欠損が心不全の進行にどのように影響を及ぼすかを解明しようとしている。特に、血液細胞で発現する限定的な数のY染色体遺伝子の各々が欠損した場合の影響を詳細に調べることを目指している。 具体的な研究手順は以下の通りである: 計画①:各Y染色体遺伝子欠損モデルマウスを用いて心不全モデルを作成し、それぞれの遺伝子欠損が心不全の進行にどのように影響するかを評価する。 計画②:Y染色体遺伝子を欠損した心臓マクロファージの機能を詳細に解析し、mLOYが心不全を悪化させるメカニズムを明らかにする。 これまでの研究によると、CRISPR/Cas9技術を用いてY染色体遺伝子をそれぞれノックアウトした造血幹細胞を骨髄移植したマウスにおいて、特定の遺伝子の欠損が心機能の悪化を引き起こすことが示唆された。今後、さらに詳細な解析を行い、心不全の進行に影響を及ぼすY染色体遺伝子を確定し、メカニズムを解明する。そして、その知見を元にmLOYの治療戦略の開発に繋げる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画①は大方完了し、残された期間で計画②の実行に移行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画①の成果を基に、Y染色体上の責任遺伝子が特定された。今後はこの遺伝子に注目し、野生型細胞と当該遺伝子欠損細胞の遺伝子発現と機能を比較する。先行研究では、Y染色体を欠失した好中球が機能変化を示さなかった一方で、心臓マクロファージではTGFbの分泌亢進などの機能変化が観察された。この結果を受け、計画②では心臓マクロファージに特化した当該遺伝子の機能解析を行う。 計画の具体的な手法としては、まず、RNAシーケンシングを行う。心不全モデルマウス(遺伝子ノックアウトマウスとコントロールマウス)から採取した心臓を酵素消化し、セルソーティングによってマクロファージ(CD45+CD68+)を単離する。そして、これらのマクロファージのRNAシーケンシングを行い、遺伝子発現のパターンを分析する。さらに、当該遺伝子の欠損により心臓マクロファージのエピジェネティック修飾が変化し、遺伝子発現が変動する可能性を検証するため、ATACシーケンシングを用いて、遺伝子欠損マクロファージのエピジェネティックな状態も解析する。これらの手法を組み合わせることで、当該遺伝子欠損が心不全の進行にどのように影響を及ぼすのか、その詳細なメカニズムを解明することを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にて病院での病棟管理など医療業務時間が想定より多くなり、研究活動への時間割り当てが減ったため、計画通りに実験を進めることができず、計画通りの執行が出来なかった。今年度は昨年度に計画していた実験と今年度の予定の実験をできるだけ並列に進めながら、全体的な実験計画の遅れを取り戻す予定である。
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