2022 Fiscal Year Research-status Report
Impacts of the SGLT2 inhibitor on the coronary microvascular function in patients with HFpEF
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22K08172
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 潤 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (00375081)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性心不 全 / 冠微小血管機能異常 / 性差 / 狭心症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、左室収縮能が保たれた心不全(HFpEF)における冠微小血管機能異常(CMD)と血管機能調節で重要なRhoキナーゼ活性が果たす役割を明らかにすると共にSGLT2阻害薬の微小血管機能改善効果について探索的検討を行うことを目的としている。HFpEFは男性に比べ女性に多く認められ、超高齢化社会である我が国において今後さらに大きな問題なる事が予想される。今年度はこれまで当科において包括的冠動脈機能評価を行った症例における微小血管機能異常の予後に対する影響の性差を後ろ向きに検討することを行った。特に冠攣縮性狭心症(VSA)患者において微小血管拡張能が予後に及ぼす影響とその性差は不明であったので器質的有意狭窄が無く、冠攣縮誘発試験が陽性の347例(女性172例、男性175例)において冠微小血管拡張能指標である微小血管抵抗予備能比(Resistive Reserve Ratio:RRR)を温度・圧センサー付きガイドワイヤーを用いて測定し、中央値3.9年追跡した。RRRは女性VSA患者で男性VSA患者に比べ有意に低値であった(2.96 vs. 3.59; P=0.002)。先行研究結果に基づきRRR<2.62を微小血管拡張能低下と定義すると、微小血管拡張能正常群では予後に性差は認められなかったが(log-rank P=0.89)、微小血管拡張能低下群(RRR<2.62)では女性に比べ男性の予後が有意に不良であった(log-rank P=0.01)。以上からVSA患者における冠微小血管拡張能低下は予後の性差に関連する可能性が示唆された。この研究結果は日本循環器学会2023年総会で研究協力者(大学院生)の福井健人医師が発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は夏ごろのコロナ感染症第7波、12月頃の第8波の影響を受け、入院患者数が制限され、本研究の対象となる狭心症症例、収縮能の保たれた慢性心不全が疑われる症例の入院が全体的に少なかった。さらに購入予定であったカテ台にて使用可能な卓上エルゴメーターの導入が社会的事情の影響により極端に遅れている。以上、2つの理由により研究は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度5月にはコロナ感染症が第5類となり、今後コロナ前の水準まで入院患者数、カテ検査数が回復することが期待される。このため狭心症、収縮能が保たれた心不全症例の検査カテーテル数が増加し、本研究にエントリーする症例数が増加すると考えられる。また、カテ台で使用するエルゴメーターも間もなく導入される予定である。今後前向きにカテーテルによる包括的冠動脈機能検査を行う症例については卓上エルゴメーター負荷を行い、冠同薬機能異常と左室拡張能の相関等を検討するとともに同意が得られた患者の皮下脂肪から抵抗血管を採取して微小な摘出血管標本を作製し、オーガンチャンバーによる等尺性張力測定実験を積極的に行っていきたい。
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Causes of Carryover |
今後、コロナ感染症による入院患者減少と心臓カテーテル検査件数減少が解消されれば、カテーテル検査数も増加し本研究の対象となる収縮能の保たれた慢性心不全症例数が増加することが見込まれ、末梢血好中球Rhoキナーゼ活性、ET-1濃度等の測定や、抵抗血管レベルの微小な摘出血管標本を用いて行うオーガンチャンバーによる等尺性張力測 定実験の件数も増加するため、そちらにかかる諸費用に充てることになる。
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