2022 Fiscal Year Research-status Report
分岐鎖アミノ酸代謝に注目した糖尿病性心筋症の病態解明と治療応用
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22K08205
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 秀和 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20590342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 学 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (70866029)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糖尿病性心筋症 / 分岐鎖アミノ酸代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、糖尿病性心筋症と分岐鎖アミノ酸代謝の関連を明らかにし、同病態に起因する心不全への治療応用を目指す。糖尿病性心筋症は糖尿病に合併する心室機能障害の中でも、冠動脈疾患や高血圧に起因しない心筋症と定義され、糖尿病有病率の上昇に伴い、同病態を原因とした心不全もますますの増加が見込まれる。また、インスリン抵抗性を有する2型糖尿病患者や肥満者では分岐鎖アミノ酸の代謝障害により、その血中濃度が上昇することや、心不全と分岐鎖アミノ酸代謝障害の関連も報告されている。 本研究では脂肪組織特的にインスリンシグナルを担うPDK1をKOしたAdipo-PDK1 Knockoutマウスを用いる。同マウスは自施設で作成されたもので、食餌や薬剤による操作なしに、心筋は強いインスリン抵抗性と心肥大を呈し、分岐鎖アミノ酸代謝の律速酵素であるBCKDHの活性が低下していることを予備実験で確認している。分岐鎖アミノ酸障害と心臓リモデリングの関連を調査するため、近年心不全治療薬として新たに承認されたSGLT2阻害薬の一つである、エンパグリフロジンをKO群へ経口投与した。分岐鎖アミノ酸代謝障害の改善を期待したが、律速酵素の活性に変化はなく、心臓組織のメタボローム解析においても分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の含量に統計上の有意差はつかなかった。今後、SGLT2阻害薬以外の薬剤についても同様の検討を行い、糖尿性心筋症における分岐鎖アミノ酸代謝障害のメカニズムの解明を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Adipo-PDK1 knockoutマウスにおける分岐鎖アミノ酸代謝障害とインスリン抵抗性の関連について研究を実施している。SGLT2阻害薬はケトン体をはじめとした心筋エネルギー基質の代謝へ影響を及ぼすことが報告されており、分岐鎖アミノ酸代謝への作用も期待して実験を行った。しかし、予想に反する結果となったため、今後他剤を含めた検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病性心筋症における分岐鎖アミノ酸代謝障害を改善させる候補として、β-アミノイソ酪酸(beta-aminoisobutyric acid; BAIBA)を用いた実験を予定している。BAIBAは分岐鎖アミノ酸の一つであるバリン由来の代謝物で、筋肉より分泌される生理活性物質(Myokine;マイオカイン)の一種として注目されている。同分子をAdipo-PDK1 KOマウスへ投与し、分岐鎖アミノ酸代謝障害や心臓phenotypeへの作用を検証する。
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Causes of Carryover |
SGLT2阻害薬の作用の検証を進める中で、実験データが予想に反する物であっため、予定していた必要試薬が不要となったため。
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