2022 Fiscal Year Research-status Report
川崎病冠動脈炎における酸化ストレス誘導蛋白(ORAIP)の役割と新規治療薬の開発
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22K08221
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Research Institution | Saitama Children's Medical Center |
Principal Investigator |
菅沼 栄介 埼玉県立小児医療センター (臨床研究部), 感染免疫科, 副部長 (60408010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
世古 義規 順天堂大学, 大学院医学研究科, 客員教授 (30240708)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 川崎病 / LCWE誘導マウス冠動脈炎 / ORAIP |
Outline of Annual Research Achievements |
検証①LCWE誘導性冠動脈炎モデルにおける酸化ストレス誘導蛋白(ORAIP)の発現解析 5週齢の雄のC57BL/6JJマウスに乳酸菌細胞壁菌体成分(LCWE)1000μgを腹腔内投与し、2週(炎症の初期)、4週後(炎症極期)に解剖を行い冠動脈炎を誘導した。コントロールはPBSを腹腔内投与し、安楽死たのちに心臓を摘出した。ORAIP/ORAIP-Rの蛍光二重染色を行い冠動脈局在について検証を行った。結果:冠動脈外膜側への好中球やマクロファージを中心とした著明な炎症細胞の浸潤と所々に筋線維芽細胞の増生が認められた。ORAIP、ORAIP-Rは、線維芽細胞の細胞膜に淡く染色を示していた。特にLCWE投与2週後の心臓組織でその発現が強い傾向にあった。 検証②川崎病患者における血清ORAIP濃度の測定 5名の川崎病患者における血清ORAIP濃度の経時的変化を解析することにより、川崎病の血管炎との関連性について検証した(①IVIG治療前、②IVIG治療後、③発症3~6週間後)。結果:川崎病のすべての患者において血清ORAIP濃度は治療前には上昇は見られず、IVIG投与後に上昇し、回復期に低下するパターンを示した。治療後に一過性な上昇を認めた。この結果から、ORAIPは冠動脈瘤形成時期に一致した上昇をすることが新たに分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス実験の進行がやや遅れた理由として、乳酸菌細胞壁菌体成分(LCWE)による血管炎の誘導が思うように惹起されなかったことから組織学的な検討に遅れが生じた。しかし昨年度の後半にはLCWE血管炎の誘導が可能となった点から、来年度以降の実験計画には大きな影響はないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、抗ORAIP抗体によるマウス冠動脈炎抑制効果の検証実験を行う予定である。まずC57BL/6Jマウスに対して、LCWEを腹腔内投与して血管炎を誘導する。抗ORAIP中和抗体は高用量、低用量での2群(投与のタイミングは現在検討中)、マウスIgG投与を行うコントロール群、さらにはPBSによる無治療群の計4群間(n=8-10)での血管炎の程度を比較検討する。組織学的な冠動脈炎の頻度(%)、冠動脈スコア(Suganuma E et al. Exp Anim 69:233-241,2020)、アポトーシス定量解析(TUNEL陽性細胞の測定、細胞カウント)など指標を用いて抗ORAIP中和抗体の有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
乳酸菌細胞壁菌体成分(LCWE)によるマウス冠動脈炎の誘導がうまく起こらず、組織学的な検討に遅れが生じた。しかし昨年度後半からは血管炎の誘導が可能となったため、遅れていた分の使用額は今年度に使用する方針とします。
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