2022 Fiscal Year Research-status Report
肺由来コンポジットマテリアルによる多能性幹細胞から肺オルガノイドの創出と機能解析
Project/Area Number |
22K08236
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
北村 知嵩 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00882044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
王寺 幸輝 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50343421)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肺オルガノイド / 脱細胞化 / 細胞外マトリックス / 胚性幹細胞 / 3次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種臓器において、脱細胞化後の細胞外マトリックス(extracellular matrix:EM)を利用することで臓器を再生させる試みが行われている。呼吸器領域においても例外ではないが、EMを分化誘導因子に用いた研究は極めて少ない。そこで、本研究では、肺由来脱細胞化マトリックス(LEM)を用いて多能性幹細胞(ES細胞)を3次元培養することで、肺特異的な分化誘導を試み、創出される肺オルガノイドの解析を行うことを目的とした。 成獣動物(マウス)の肺をSDS処理することでLEMを調整後、更にシート状に加工したLEM-Sheetを作成した。LEMおよびLEM-Sheetは、凍結切片作成後、H&E染色等により評価した。更に、厚みの異なるLEM-Sheetを用いて多能性幹細胞(マウスES細胞)の3次元培養を行った。その結果、シート厚は、ES細胞の生着や細胞増殖に影響することが明らかとなった。分化誘導した肺オルガノイドにおいて、各種肺細胞関連マーカー(1型肺胞上皮細胞:AQP5、2型肺胞上皮細胞:SPC、クラブ細胞:CC10など)の遺伝子発現を解析した結果、LEM-Sheetは各種マーカーを誘導亢進させた。加えて、免疫染色による評価では、各種肺細胞マーカーを発現する細胞の増加を認めた。 今後、LEM-Sheetを用いた分化誘導後のオルガノイド解析を継続し、新たな生体材料(マウス胎児由来未成熟肺細胞など)を利用して更なる分化誘導の条件検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、肺由来脱細胞化マトリックス(LEM)を用いた多能性幹細胞(マウスES細胞)の3次元培養を行い、遺伝子発現解析および免疫染色による組織学的解析により、LEMは肺細胞への分化誘導に効果的であることが示されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
LEM-Sheetを用いることで各種肺細胞への効率的分化誘導を認めたことから、更なる素材加工(ゲル化)により、3次元培養を行う予定である。また、マウス胎児より未成熟肺細胞を調製し、LEMを用いてES細胞と共培養することで、更なる肺細胞への効率的分化誘導とオルガノイドの創出を検討する。遺伝子発現と細胞免疫染色を用いて各種肺細胞マーカーを解析する。更に、電子顕微鏡による肺微細構造解析により立体構造と機能を兼ね備えた肺オルガノイドの創出を検証することで、肺の再生・発生に寄与する基礎的データを構築する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)本研究計画の2年目(令和5年度)において、肺オルガノイド形成に関わる種々の遺伝子変異を網羅的に解析する目的で、NGS解析などの受託研究費、および各種抗体などの購入費用の発生が予想された。本年度は主に消耗品(培養液、プラスチック器具等)の購入に使用し、次年度に備え、必要最低限の量を計画的に購入し繰越金を捻出したため。 (使用計画)今年度の使用計画としては、次年度は繰越金を合算して、次世代RNAシークエンスなどを用いた更なる解析を行いつつ、初年度に購入した消耗品を継続使用することや実験に必要な物品を計画的に購入することで研究を遂行する。
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