2022 Fiscal Year Research-status Report
Preclinical study to develop treatment strategies against KRAS-mutated non-small cell lung cancer
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22K08237
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
洪 泰浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80426519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 信之 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60298966)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肺がん / 分子標的治療 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、肺がんを含む固形がんにおいて、その発症及び進行に関与する多くの遺伝子異常が同定され、それらを標的とする治療法の確立が進み、いわゆるプレシジョンメディシンの発展がめざましい。その中で、古典的な発がんの原因遺伝子変異であるKRAS変異を標的とする治療の開発が長年の課題であったが、KRAS G12C変異阻害剤の登場によって大きなブレイクスルーがもたらされている。GRAS G12C変異を有する症例が多い非小細胞肺がんにおいては、KRAS G12C変異阻害剤を用いた最適な治療戦略開発及び耐性機序の解明とその克服は喫緊の課題である。本研究提案においては、KRAS G12C阻害剤耐性細胞株を用いての基礎検討を実施し、それに加えてKRAS G12C阻害剤治療前後の組織及び血液検体を用いた解析を行うことで、KRAS変異陽性肺がんにおける治療向上及びプレシジョンメディシン推進への橋渡しとなる基盤研究を実施する。これまでに肺腺癌細胞株であるH358、Lu65に及びMIA PaCa-2細胞株を用いてKRAS G12C阻害剤であるsotorasib耐性細胞株の樹立に成功しており、現在樹立した細胞株を用いての解析を進めている。臨床検体を用いた検討についても、KRAS G12C変異陽性の肺癌症例を対象とする、プラチナ製剤+ペメトレキセド+sotorasibの多施設第II相試験(jRCT2051210086)に登録された30症例から採取した血液検体を回収し、抽出した血漿DNAを用いた次世代シーケンスによる網羅的変異解析を開始する準備が整っている。登録された症例から採取した組織検体についても、次年度に網羅的遺伝子変異解析及びRNAシーケンスの実施を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KRAS G12C阻害剤であるsotorasibに感受性のある肺腺がん細胞株であるH358、Lu65及び膵がん細胞株であるMIA PaCa-2を用いて耐性株をすでに樹立している。具体的には、阻害剤の濃度を経時的に上昇させて暴露することで耐性を獲得させた耐性細胞と、変異原物質であるENUを用いてランダムに遺伝子変異を発生させることで確立した耐性細胞の2種類の作製を行っている。現在は、親株との違いを比較することで、耐性機序を探索しており、ウェスタンブロット法によるsotorasib処理時のRAS/RAF/MEK系シグナルの変化及びPETN/PIK3CA/AKT経路の変化の検討を実施中である。肺がん症例に対しての、気管支鏡検査による生検検体、胸腔穿刺による胸水検体及び血中循環腫瘍細胞からオルガノイドの樹立を進行中である。KRAS G12C変異を有する2株の樹立に成功しており、sotorasibに対する感受性の評価及びシグナル系の変化についてウェスタンブロット法での評価を実施中である。KRAS G12C変異陽性の肺がん症例を対象とする、プラチナ製剤+ペメトレキセド+sotorasibの多施設第II相試験(jRCT2051210086)に登録される症例からの、治療前後の血液検体を用いてリキッドバイオプシー解析について、予定していた30症例から採取した末梢血より抽出した血漿DNAについてはすでに収集を終えている。現在は、197遺伝子における網羅的変異解析を実施する準備を進めており、イルミナ社のNextSeq 500を用いてシーケンスを実施する。治療への奏功を含む詳細な臨床情報とリキッドバイオプシーから得られたゲノムデータの統合解析を行うことで、耐性機序の解明及びさらなる治療開発へ向けての重要なデータを取得する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
耐性細胞を用いた検討においては、shRNAによるノックダウンやsgRNAライブラリを用いたCRISPR/Cas9によるkinome-wideなスクリーニングを行うことで、耐性機序の探索を行うとともに、耐性克服のための標的の探索を進める予定である。血中循環腫瘍細胞を用いてのオルガノイド樹立に関しては、血中循環腫瘍細胞を回収するためのデバイスの最適化を進め、より多くの腫瘍細胞の回収を目指すとともに、回収プロセルにおける低侵襲化を図る。。具体的にはdeterministic lateral displacement(DLD)法を導入することで、前処理を省き、細胞への侵襲の低下を図ることで樹立成功の改善を試みる予定である。血液検体を用いたリキッドバイオプシー解析については、次世代シーケンスより得られたゲノムデータと、治療への奏功を含む詳細な臨床情報との統合解析を行うことで、耐性機序の解明及びさらなる治療開発へ向けたデータを取得する予定である。さらには、治療前に加えて、治療中及び増悪時の血液検体から抽出した血漿DNAを用いた解析を進める予定である。これにより、耐性獲得メカニズムの解明につながる可能性があると考える。加えて、採取した組織検体についても、次年度に網羅的遺伝子変異解析及びRNAシーケンスの実施を予定しており、血液検体と併せて解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
臨床試験に登録された症例より採取した血液検体の収集に時間がかかったため、次世代シーケンスについては次年度に測定を実施することになった。よって、次世代シーケンシングの費用が未使用となっている。そのため、次年度に次世代シーケンシング用の消耗品使用予定額が増えることになった。加えて、加えて、組織検体を用いての次世代シーケンスも次年度に予定していることより、次世代シーケンスに研究費を使用する予定である。
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