2022 Fiscal Year Research-status Report
真菌のアジュバント効果による喘息重症化の可能性解析
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22K08242
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
白石 良樹 東海大学, 医学部, 特任講師 (90383736)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 喘息 / 真菌感作 / 獲得免疫 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究背景】気候温暖化により住環境の真菌量が増えることから、真菌感作率の増加は真菌感作喘息の重症化とアレルギー性気管支肺真菌症 (allergic bronchopulmonary mycosis; ABPM)併発の増加を懸念される。ABPMは気道閉塞する粘液栓を生じ、末梢血好酸球数増多と高IgE血症を認め、真菌特異的IgE・IgGが陽性となるが、治療によりIgE値が急激に低下する点で、高IgE値を示す喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患と異なる。 【研究目的】真菌感作喘息について、真菌種による抗原感作感作誘導性の違いや喘息重症化機序の違い、喘息を治療するうえで最も重要な薬剤であるコルチコステロイドへの治療抵抗性獲得の違いについて、atopicとnon-atopicの機序が共存する真菌感作喘息モデルを用いて喘息の病態形成を解析し、真菌による喘息重症化の回避に繋がる知見を得ることを目的とする。 【本申請の研究ゴールについて】本研究は異なる真菌抽出物(熱処理した真菌抽出物も含む)投与で作製したatopic、non-atopicの要素を持つ真菌感作喘息モデルを基本として、IL-1α、IL-33 (±TSLP)などで獲得免疫系、自然免疫系の要素を変調させた場合に、1)気道過敏性、肺に浸潤する炎症性細胞、サイトカイン、脂質メディエーター産生の違い、2)真菌抽出物の存在下では免疫アジュバントなしでは感作成立困難なOVAやDNPに対する感作の成立、真菌種による特異的IgE、非特異的IgE産生バランスの違い、3)真菌種によるステロイド抵抗性の獲得の有無などを指標に、真菌感作が引き起こす喘息重症化、ステロイドによる治療抵抗性、新たな抗原感作獲得のし易さについて評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Aspergillus fumigatus抽出物(AFE)に加えて、2型自然リンパ球(ILC2)を活性化し、B1細胞の活性化を通じてinnate IgG/IgE産生誘導を期待するインターロイキン(IL)-33、樹状細胞による抗原プロセッシングを活性化して濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)への抗原提示とB2細胞からの抗原特異的IgG/IgE産生を期待するIL-1α、あるいはそれらのvehicle (PBS)をC57BL/6Jマウスに週に2回、5週間気道内投与してatopicとnon-atopicの機序が共存する真菌感作喘息モデルを作製を試み、それぞれの薬剤の投与量の最適化を行った。 AFEに加えて、2型自然リンパ球(ILC2)を活性化し、B1細胞の活性化を通じてinnate IgG/IgE産生誘導を期待するインターロイキン(IL)-33、樹状細胞による抗原プロセッシングを活性化して濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)への抗原提示とB2細胞からの抗原特異的IgG/IgE産生を期待するIL-1α、あるいはそれらのvehicle (PBS)をC57BL/6Jマウスに週に2回、5週間気道内投与してatopicとnon-atopicの機序が共存する真菌感作喘息モデルを作製した。 AFE + vehicle投与群では好酸球性の気道炎症誘発と肺組織内に3次リンパ組織の形成を確認した。AFEに加えてIL-33、またはIL-1α投与した群では共にAFE単独よりも強い3次リンパ組織形成を認めた。気道周囲の好酸球集積の程度は、AFE + IL-33 > AFE + vehicle > AFE + IL-1αの順であった。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度は、肺組織内に3次リンパ組織について、投与群ごとの特徴の違いの精査することを行う。また、AFEによる抗原感作の程度を測るため、先述の投与群のそれぞれの投与薬液に、ハプテン無しでは感作成立が困難な卵白アルブミン(ovalbumin, OVA)または、dinitrophenol (dinitrophenol)を加えて投与して、OVAやDNPに対する感作獲得を評価し、innate IgEを産生するB1細胞、特異的IgE産生するB2細胞数の違いについてFACSで評価する予定である。 また、TSLP投与によって獲得されるILC2のコルチコステロイド耐性について、本研究のatopic、non-atopicな特徴を併せ持つ喘息モデルの中ではどのように働くか、抗TSLP抗体の投与がコルチコステロイド耐性獲得した群の治療効果にどのような影響を及ぼすか、気管支肺胞洗浄液中の白血球分画の違い、肺の病理組織像、肺組織中に誘導される3次リンパ組織、innate IgE産生するB1細胞、特異的IgE 産生するB2細胞のバランス、特異的IgE、総IgEのバランスについて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度の交付額1,300,000円に対して、支出累計額は1,289,081円、差引額 10,919円であった。 差引額 10,919円が生じた理由は、試薬を購入するには不足し、実験動物のマウスは1匹2,157円であるが、1回のの実験には1群3から4匹として、3から6群を比較をする実験を行うため、10,919円では不足する。そのため10,919円を次年度に繰り越す決定をした。
次年度(2023年度)は、直接経費 1,100,000円、間接経費330,000円、2022年度繰り越しの10,919円を合わせた1,440,919円となり、実験動物購入費、試薬購入費、旅費(海外)、設備充実費などに充てる予定である。
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Research Products
(1 results)